研究課題/領域番号 |
18K18159
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岡本 一志 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10615032)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報推薦 / 推薦理由の説明 / 協調フィルタリング / 線形回帰モデル / 図書推薦システム / 研究者推薦システム |
研究実績の概要 |
本研究では,推薦理由の説明機能を有するモデルベース協調フィルタリングを回帰分析により実現することを目指している.2020年度では,線形回帰をベースに,推薦の透明性を有した推薦モデルの開発に取り組んだ.具体的には,次の2点を行った.
(1)2020年3月に,アイテムベース協調フィルタリングをユーザ毎にLIMEと呼ばれる線形回帰モデルで近似し,モデルの回帰係数を推薦説明に利用する手法の報告があった.これは2018年度に取り組んでいたユーザやアイテム毎に回帰モデルを構築する手法と類似しているため,前年度から取り組んでいた図書の貸出履歴を用いた図書推薦への適用を試みた.推薦性能の評価実験から,登録ユーザ数5,000人・登録アイテム(図書)数20,000件規模のデータセットにおいては,回帰モデルにユーザと図書を直接入力するよりもユーザと図書をそれぞれグループ化した方ほうが推薦精度が高く,推薦処理時間が短いことを明らかにしている.アイテムベース協調フィルタリングをLIMEで説明するアプローチでは,入力が高次元とならないような工夫を踏まえた上で,推薦説明を行う必要があることを確認している.
(2)線形回帰モデルを用いた推薦システムの応用例として,研究者推薦システムの開発に取り組んだ.このシステムは,入力の研究者について,登録研究者との研究概要等の類似度や過去の共同研究数,所属機関を特徴量として共同研究が起きる確率を線形回帰モデルで予測し,確率の高い順に研究者リストを出力する.推薦説明には各特徴量に対応する回帰係数を提示することを想定している.科学研究費助成事業データベースの研究課題データを用いた研究者推薦実験より,開発システムは,過去同一機関に所属したことのある研究者を推薦する場合,推薦精度が5つのベースラインモデルと同等以上となることを確認している.この成果は学術論文誌にて採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,2020年度は推薦理由の説明インタフェースの開発を行うことを予定していたが,2020年3月に報告されたアイテムベース協調フィルタリングをLIMEで説明するアプローチは当初予期しておらず,これまでに取り組んできた研究と比較する必要があった.加えて,COVID-19の流行によるキャンパスの閉鎖などの影響もあったことから,当初計画を変更し,説明インタフェースの開発を進めることよりも,LIMEによる説明の特性を検証することを優先した.この結果は,説明インタフェースの開発にもフィードバックできることから,一定の進捗があったと考える.また,並行して進めていた線形回帰モデルによる研究者推薦システムの開発は本研究の申請時には想定していなかった研究であり,学術論文誌で採択されたことは大きな成果といえる.
以上より,当初計画に変更があったものの,本年度で得られた研究成果は当初計画の達成に有用なものであり,補助期間の延長により次年度も本課題に取り組むことから,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,回帰係数の提示方法について検討を進め,推薦理由の説明インタフェースの開発に取り組む.さらに,開発した説明インタフェースのプロトタイプを図書推薦システムに実装し,その有効性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表や情報収集のため,国際会議や国内会議参加に必要な旅費を計上していたが,COVID-19の流行により,会議がオンライン開催となったため次年度使用額が生じた.次年度使用額については,謝金や論文掲載料,英文校正などに充てることとする.
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