研究課題/領域番号 |
18K18176
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
津滝 俊 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (40706371)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表面質量収支 / 東南極ドローニングモードランド地域 |
研究実績の概要 |
氷床沿岸部からドームふじ基地に至る約500点において取得された、1991年から2015年の雪尺観測データを再編集した。また2018年11月から2019年1月にかけて実施されたドームふじ基地近傍への調査旅行に参加し、上記と同じ観測点において雪尺観測を実施した。新しく取得した雪尺観測データを1991-2015年のデータセットと結合し、1991年から2019年に及ぶ表面質量収支データセットを構築した。 雪上車に設置した高精度GNSSを用いて、精密な氷床表面高度測量を実施した。氷床沿岸部からドームふじ基地に至る約1000kmの往復路、およびドームふじ基地南方領域(総面積約1500平方km)において、概ね0.5kmの測線間隔で測量を実施した。また、ドームふじ基地にGNSS基地局を設置し、約1ヶ月に及ぶ連続測量を行った。GNSSデータは1秒間隔で連続的に取得した。基地局および移動局のGNSSデータを解析し、総距離3200kmに及ぶ表面高度データを得た。 表面質量収支と氷床表面地形との相関関係を解析した結果、氷床表面が比較的緩やかな地域では涵養量が多く、傾斜の大きい地域では涵養量小さくなる空間分布が示された。この結果から、氷床表面地形が涵養量の空間分布を決定する一因であることが示唆された。これによって、過去30年に及ぶ東南極ドロンニングモードランド地域の表面質量収支の時空間変化、および質量変化の空間的ばらつきに対する氷床地形の影響に関する新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度は当初の計画通り、過去30年にわたる表面質量収支データセットの構築、および表面質量収支の時空間変動解析と誤差評価を実施した。また全球気候モデルを用いた数値実験の準備も進めており、過去数百年に及ぶ当該地域の表面質量収支の時空間変動のの解明に取り組みはじめている。以上の状況から、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
過去30年スケールでの東南極ドロンニングモードランド地域の表面質量収支の空間変動を広域で明らかにするため、90年代以降に取得された複数の衛星高度計データを現地観測データで検証し、表面質量収支の二次元データの構築を目指す。 涵養量の空間分布変動に影響を及ぼしうる気象学的要因を明らかにするため、気候モデルや再解析データによる降水量、風向、風速データを用いて、表面質量収支との相関関係を面的に解析する。涵養量の経年変動を解析し、重力衛星や領域気候モデルによって示された当該地域の近年の涵養量の増加を考察する。
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