研究課題
本研究では、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度観測用のドローンを開発し、秋田県大潟村上空におけるCO2の鉛直分布観測を実施した。観測前後にはCO2濃度が異なる2種類の標準ガス及び窒素ガス(CO2濃度が0ppmであるガス)をNDIRに注入して得られた測定値と分析値の関係式を作ることにより、飛行観測中のCO2データを補正した。約1年の観測期間中に月1回以上の頻度で大気観測を実施し、大潟村上空のCO2鉛直プロファイルデータを取得した。観測されたプロファイルデータから季節別、月別のCO2濃度の特徴を調べた。2~3月のように大潟村周辺域が寒冷な時期のCO2濃度は、地表付近10 mから上空500 mまでの濃度勾配が小さく、各高度のCO2濃度の差は1ppm以内であった。4~5月も地表から500 mまでのCO2濃度勾配は顕著ではないが高高度ほどやや高濃度で観測された。この時期に大潟村周辺域における植生の光合成活性が高まりCO2吸収に関与したと推察される。6~8月に、地表付近で低濃度、高高度ほど高濃度といった顕著な濃度勾配が観測された。特に10~100mにおける濃度低下が大きく、この時期に光合成活動が最盛期であったことを示唆している。また9~11月は500mまでの濃度勾配はそれほど顕著ではないが、高高度ほど高濃度であった。これは秋季において光合成活性が弱まったことを示唆している。また、ドローン観測によって得られた月別CO2濃度データと気象庁の大気輸送モデルによって推定された大潟村付近の月別CO2データは似た傾向を示していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度観測を目的としたドローンを開発して飛行試験を実施すること、および標準ガスによるCO2濃度データの補正を行い高精度なデータを取得することが初年度の目標であった。実際に、複数の標準ガスによる補正方法を確立し、1年以上のドローンによる鉛直プロファイルデータを取得することに成功した。秋田県大潟村上空の高度別のCO2濃度が顕著な季節変動を示し、気象庁の大気輸送モデルの結果と似た変動を示すことが明らかになった。国際学会や講演会においてこれらの内容で発表を行い、査読付き学術誌に投稿中であることから、当初の計画通りに研究が進んでいると言える。
ドローンデータの検証を実施することにより、ドローンによる二酸化炭素(CO2)濃度観測技術の実用化を目指していく。具体的には、秋田県の大潟村や寒風山周辺域において地上から上空500mまでのいくつかの高度でドローンによるCO2観測と地上によるCO2観測を同時に実施する。標準ガスによる補正を行った後、各高度で両データの差がどの程度となるのかを詳しく調べる。また、ドローンデータとこれまでに得られた季節別の航空機観測データとを比較し、ドローンによって得られる温室効果ガス濃度の鉛直分布の妥当性を検討する。さらに、地上設置のフーリエ変換分光計(FTS)、人工衛星GOSATデータとドローンデータとを比較し、ドローン観測を衛星データの検証に用いるための手法を検討する。
昨年度の所要額をちょうど使い切れなかったため、6515円の次年度使用額が生じた。これを翌年度分として請求する助成金と合わせ、研究論文の投稿料や農業気象学会等の旅費、消耗品等を購入予定である。
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日本気象学会東北支部だより
巻: 88 ページ: 1-2
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