研究課題/領域番号 |
18K18181
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
望月 智貴 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (50781811)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ギ酸 / 酢酸 / 主要森林樹木 / 道路緑化樹木 / 大気環境 / 有機エアロゾル / テルペン |
研究実績の概要 |
ギ酸と酢酸は大気中に多量に存在し、それらは有機エアロゾルとなり大気環境に影響を及ぼす。それらの発生源は人間活動由来と植物が放出するBVOCの酸化生成がある。一方、植物はギ酸と酢酸を体内で生成するため、それらのガスは植物から直接放出される可能性がある。本研究では、日本の主要樹木由来ガス状のギ酸と酢酸の直接放出量を明らかにすることを目的とする。 植物から放出されるガス状のギ酸と酢酸の測定法を検討した。陽子移動反応質量分析計は数ppbのガス状のギ酸と酢酸の濃度を数秒で測定できるが、同じ分子量の物質を分離できない。他の物質のフラグメントイオンがギ酸および酢酸の分子イオンと重なる場合、正確な濃度を測定できない可能性があった。KOHを超純水に溶かしpH9.0にしたアルカリ水にギ酸と酢酸をバブリングして捕集し、有機酸分析用液体クロマトグラフ(HPLC)で分析する方法は、測器の感度の関係からサンプル液を濃縮する作業は必要だがギ酸と酢酸を分離し検出することができた。植物はテルペン類を含む様々な有機ガスを放出するため、それらガスがギ酸と酢酸の測定に影響しない方法として、HPLCを用いた分析法を採用した。 アルカリ水にギ酸と酢酸ガスを捕集しHPLCで分析する手法を用いて、日本の森林を構成する主要樹種の上位10樹種と日本の道路緑化樹木の上位10樹種のギ酸と酢酸の放出有無のスクリーニング測定を夏季と冬季に行った。落葉樹の落葉期間を除いて、森林の主要樹種であるスギ、コナラ、ヒノキ、マツ、モミ、ブナ、カラマツ、シラカンバ、シイ、カエデのすべてからギ酸と酢酸の放出を確認した。道路緑化樹木のイチョウ、サクラ、ケヤキ、ハナミズキ、トウカエデ、クスノキ、ナナカマド、カエデ、モミジバフウ、プラタナスのすべてからギ酸と酢酸の放出を確認した。今後、それら放出を制御する環境要因の解明と放出量の算出を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物が生産し放出する有機ガスの中で、テルペン類が主成分である。テルペン類放出の有無は樹種によって異なる。研究開始時はテルペン類と同様にギ酸と酢酸の放出の有無は樹種によって異なると考えた。実際は、本研究で測定した全樹種からギ酸と酢酸の放出を確認した。そのため、測定量を増やすため、ガス採取装置を増大することとした。
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今後の研究の推進方策 |
測定したすべての樹種(1種重複のため全19樹種)からギ酸と酢酸の放出を確認した。 2019年度は、樹木から放出されるギ酸と酢酸の放出量と気温や光強度(光合成有効光量子束密度)の関係を明らかにし、放出アルゴリズム式を樹種ごとに作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究当初、樹木から放出されるギ酸と酢酸のガスは樹種間で放出の有無があると考えていた。しかし、研究が進むにつれて測定対象樹種(計19樹種)すべてからギ酸と酢酸のガスが放出されることが明らかになった。次年度に測定する分量が当初の予定より3倍となった。そのため、ガス採取装置をさらに製作することした。一部の物品の納品が遅くなり、年度を超えることが分かったため、次年度使用額が発生した。
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