ギ酸と酢酸はそれらの凝集や既存の無機粒子への吸着により有機エアロゾルの生成に寄与する。ギ酸や酢酸に富む有機エアロゾルは地球の冷却効果や降水などに関与し、気候や気象に影響を及ぼす。ギ酸と酢酸の起源は人間活動由来と植物が放出するテルペン類酸化由来であり、植物起源の重要性が指摘された。一方、植物はギ酸と酢酸を合成するが、植物から直接放出されるガス状のギ酸と酢酸測定例は少なく、アジア域での測定報告はない。本研究では、日本の主要樹木上位10種と道路緑化樹木上位10種のガス状のギ酸と酢酸の直接放出の有無(スクリーニング測定)とそれらの放出量を求める。さらに、植物から直接放出されるギ酸と酢酸の量が、植物起源に占める割合を明らかにすることを目的とする。 結果、測定した日本の主要樹木上位10種(スギ、ヒノキ、コナラなど)と道路緑化樹木上位10種(イチョウ、ケヤキ、カエデなど)のすべてからガス状のギ酸と酢酸の放出を確認した。一方、テルペン類の放出の有無(例:コナラはイソプレン放出、スギやカエデはモノテルペン放出、ブナやイチョウはイソプレンとモノテルペンを放出しない)は樹種によって異なった。 樹木から直接放出されるギ酸と酢酸(直接放出)がテルペン類酸化由来(2次生成)と直接放出の合計に占める割合は6~90%の範囲であり(平均63%)、樹木から直接放出されるギ酸と酢酸は植物由来のそれらガスの放出源として重要であることが明らかになった。
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