研究課題/領域番号 |
18K18184
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
青柳 智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10812761)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 鉄(III)還元菌 / 嫌気酢酸代謝 / 地下圏 / ゲノム解析 / 安定同位体追跡法 / SIP / 分離培養 / エネルギーフラックス |
研究実績の概要 |
本研究は地下圏における「結晶性酸化鉄を還元する新規微生物」を対象とし、これまで解明が困難であった嫌気環境中の炭素・エネルギーフラックスの中核を担う未知微生物群の実体を、研究代表者の独自技術で解明しようというものである。 〔課題1〕結晶性酸化鉄を還元する微生物の細胞外への電子伝達メカニズムの解明において、今年度は研究代表者がすでに分離培養に成功していた、新規な結晶性酸化鉄を還元する微生物6種を対象として、それらのドラフトゲノム配列の取得とアッセンブル解析を行った。 〔課題2〕地下圏で主要な嫌気酢酸代謝を担う未知微生物群の網羅的な同定において、今年度は研究代表者が5年以上にわたり集積培養を続けていた地下圏サンプルにおいて、酢酸の安定同位体を用いた高感度SIP(stable isotope probing)実験に供するため、鉄還元の有無や集積微生物を16S rRNA遺伝子を対象とした次世代シークエンサー解析による培養系の選定を行なった。およそ400の集積培養系を対象とし、そこから5の培養系を絞り込んだ。 〔課題3〕地下圏において嫌気酢酸代謝を担う中核微生物群の高度集積化と分離培養において、今年度は研究代表者が5年以上にわたり集積培養を続けていた培養系からの新しい鉄還元菌の分離培養を試みた。新規な鉄還元菌が集積されている培養系を対象として、限界希釈培養および結晶性鉄から溶解性鉄へ培養基質の置換を行い、分離培養を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〔課題1〕Deltaproteobacteria綱の新規なクレードに分類される、6種の鉄還元菌を対象にペアドエンドとメイトペアの両メソッドでライブラリを構築し、ドラフトゲノム配列データを取得、アッセンブルを実施した。そのうち1種はライブラリ調整不調でクオリティの高いデータが取得できてなかったため、再度データ取得を試みる予定である。 〔課題3〕結晶性酸化鉄と酢酸で集積培養を継続していた約100の培養系を対象に、微生物16S rRNA遺伝子を対象として次世代シークエンサー解析を実施した。その結果、Firmicutes門細菌が高度に集積されている培養系をいくつか見出すことができた。それらの高度集積系を対象として、限界希釈培養および結晶性鉄から溶解性鉄へ培養基質の置換を行い、純粋培養系の構築を試みたところ、集積培養系で高度に集積されていたFirmicutes門に属する2種の純粋培養に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
〔課題1〕〔課題3〕分離菌を用いた結晶性酸化鉄還元試験、ゲノム解析および比較ゲノム解析 〔課題2〕集積培養系を用いた13C酢酸と結晶性酸化鉄による高感度SIP解析 地下圏における「結晶性酸化鉄を還元する新規微生物」の実体を明らかにするため、取得した新規な微生物を用いた純菌ベースによる結晶性酸化鉄の還元試験とゲノム解析で得られたデータに基づいた比較ゲノム解析を並行して行う予定である。また新規微生物が高度に集積した培養系を用いて高感度SIP解析を実施し、地下圏の「結晶性酸化鉄を還元する新規微生物」を網羅的に同定する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
系統解析用のUnixパソコンを計上していたが、目的のグレードの最新版Unixパソコンを年度内に購入できなかったため、その分を次年度へ持ち越した。研究の加速化のため、次年度への持ち越しと次年度予算を用いて、数ヶ月でも研究サポート員を雇う予定である。
|