研究課題/領域番号 |
18K18189
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研究機関 | 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター |
研究代表者 |
山口 保彦 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 研究員 (50726221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 溶存有機物 / 窒素循環 / 窒素同位体比 / アミノ酸 / 琵琶湖 / 分子サイズ |
研究実績の概要 |
本研究では、溶存有機窒素を無機窒素から分離・精製して、その窒素同位体比を微量かつ高精度に分析する手法を開発し、水圏環境中の溶存有機物の分解性や生成源の指標として確立することを目的としている。2020年度には、溶存有機窒素の分子サイズ別窒素同位体比分析に向けて、環境水から溶存有機物(DOM)を分子サイズ別に分画濃縮するための手法開発に主に取り組んだ。溶存有機物の分画濃縮については、数十Lスケールの限外濾過システムを2台自作し、高分子DOMと低分子DOMを数十Lの環境水から同時に分画濃縮できる体制を整備した。様々な限外濾過スパイラル膜について、琵琶湖湖水を用いて分画濃縮を行い、高速サイズ排除クロマトグラフ-全有機炭素計(HPSEC-TOC)でDOMの分子サイズ分布を定量した。その結果、カットオフ分子量30kDaの膜を用いることで、高分子DOM(重量平均分子量150kDa程度)と低分子DOM(重量平均分子量2kDa程度)のピークを効果的に分離できることが分かった。高分子DOMについては、超純水によるdiafiltrationを繰り返すことで、低分子DOMを洗い流して高純度に回収できる見込みがついた。さらに、高速液体クロマトグラフ蛍光検出器(HPLC-FLD)とOPA-IBLC/IBDC誘導体化を用いて、琵琶湖の湖水および野洲川の河川水を用いた有機物長期分解実験の試料について、アミノ酸鏡像異性体比の分析を進めた。その結果、琵琶湖表層湖水には、準易分解性の細菌由来溶存有機窒素が多く含まれることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度には、溶存有機窒素の分子サイズ別窒素同位体比分析に向けた、限外濾過システムを用いた溶存有機物の分子サイズ別分画濃縮の手法開発を、大きく進展させることができた。アミノ酸鏡像異性体比分析からは、湖の溶存有機窒素に、準易分解性の細菌由来成分が多く含まれるという重要な知見も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、開発を進めた限外濾過法を用いて、琵琶湖湖水から高分子DOMと低分子DOMを高純度に分画濃縮し、それぞれの窒素同位体比を測定し、アミノ酸組成等の指標とも組み合わせて、起源を推定する。有機物長期分解実験試料のHPSEC-TOC分析からは、高分子DOMの方が低分子DOMよりも分解速度が速いことも2020年度までに突き止めており、起源と分解速度の関係についても明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、2020年度に参加予定だった国際学会および国内学会が延期となった。さらに、実験消耗品の購入が当初の予定よりも安価に済んだ。2021年度には、延期となった学会への参加費用と、実験消耗品の購入に用いる予定。
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