研究課題/領域番号 |
18K18192
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
砂田 成章 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70807677)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | G2/M細胞周期アレスト / CDK1阻害剤 / 相同組換え修復 / 放射線感受性 |
研究実績の概要 |
S/G2期の細胞は、放射線などによるDNA二本鎖切断(DSB)に対して、選択的に相同組換え(HR)による修復経路を活性化させる(Hustedt N and Durocher D, Nat Cell Biol 2016)。このようなDNA修復経路の選択は、HR修復に異常を有する細胞において、選択的なDNA修復の阻害を引き起こし細胞致死が誘導されると考えられる。そこで本研究では、細胞周期制御と放射線によるDNA損傷誘導を組み合わせることで、HR修復欠損のがん細胞特異的に治療効果を増強させる戦略を提案する。 これまで我々は、CDK1の特異的阻害剤RO-3306によるG2/M期における細胞周期アレストが、HR修復経路への選択を亢進させることを見出した。一方で、RO-3306がG2/M期アレストを誘導しない濃度(2 uM)と誘導する濃度(10 uM)は、異なる放射線感受性、前者は放射線増感、後者は放射線抵抗性を示した。そこで当該年度では、CDK1阻害剤と放射線の併用による感受性メカニズムのさらなる詳細について調べた。 上記の2つの異なるRO-3306濃度(2 uMと10 uM)を処理した細胞に放射線照射を行い、その後のRad51フォーカス形成とHDRアッセイによるHR修復の程度を調べたところ、濃度依存的にHR修復が抑制されることがわかった。、一方で、HR修復が強く抑制する濃度(10 uM)によるG2/M期アレスト下では、未修復のDNA損傷がM期に持ち込まれず、G2期において修復が進行していることを見出した。 このことは、CDK1阻害剤によるHR修復抑制がもたらす細胞致死は濃度依存的であり、細胞周期制御が大きく影響していることを示唆しており、さらに詳細な解析を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDK1阻害剤(RO-3306)と放射線の併用による感受性が、濃度依存的に異なるメカニズムを見出した。これは細胞周期依存的であることが示唆され、順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
エトポシドなど放射線以外のDNA損傷誘発剤との併用においても、同様の結果が得られるかどうかを調べ、CDK1阻害剤による臨床応用戦略の提言を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において共用測定機器(フローサイトメーター)不調の修理に伴い、一部で実験の遅れが発生した。それに関わる消耗品の購入を次年度に持ち越したため。
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