研究課題/領域番号 |
18K18198
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
砂押 正章 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究員(定常) (70756030)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 放射線発がん / 組織内微小環境 / マウス胸腺リンパ腫 / 系統差 |
研究実績の概要 |
2018年度は、予備的な実験を行い、発がん過程の組織内微小環境を捉える手法として、放射線照射後のマウス胸腺を透明化する技術、ならびに透明化した胸腺の免疫組織化学染色による微小環境解析手法を確立した。B6C3F1マウスにγ線を照射後、胸腺の微小環境が劇的に変化することが明らかになっている照射後2日と4日の胸腺を採取し、透明化および免疫蛍光染色法、共焦点顕微鏡を用いた三次元的な解析により、放射線被ばく後初期に応答することが報告されている好中球、マクロファージ、ならびに樹状細胞の動態を調べた。その結果、これら細胞の分布や形態が経時的に変化する様子を三次元的に捉えることができた。今後は、二次元的な解析に加え、三次元的にも解析を行い、放射線被ばく後の発がんに関わる組織内微小環境変化を明らかにする。 また、アメリカ(シカゴ)で開催された国際学会(64th Annual meeting of Radiation Research Society)に参加し、組織内微小環境が発がんに関わるシンポジウムにおいて、興味深い情報を収集することができた。特に興味深かったのは、移植するがん細胞が同じでも、移植を受ける動物の年齢や体内環境が異なることで、がんの発生率や成長が異なるということを示した研究成果であった。今後、これらの研究をフォローすることが我々の研究の発展にも繋がる可能性が考えられた。積極的にコミュニケーションを図ったため、共同研究に発展するような研究者のネットワークを広げることもできたと思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は動物実験施設のX線照射装置の故障により、当初予定していたスケジュールで実験を進めることができなかった。そのため、本実験においては、用いる動物実験施設を変更することとした。施設の変更に伴い、当初用いる予定であったMSM/Msマウスを実験期間中に変更後の施設に導入するのは困難であると判断し、動物実験計画を変更することにした。以上の理由から、当初の研究計画よりもやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
動物実験施設の変更に伴い、設置されている照射装置の違いから、マウスに照射する放射線はX線からγ線に変更する。また動物飼育環境の衛生レベルの違いより、用いるマウス系統をMSM/MsからC3Hに変更し、2019年度以降の研究を進める予定である。変更に伴い、当初用いる動物の系統は変わるが、C57BL/6系統とC3H系統では、放射線胸腺リンパ腫の発生率が大きく異なることがすでに分かっていること、ならびに上記2系統に関しては、当研究室の発がん実験のデータが蓄積しているため、それら実験データも活用し、研究を加速させる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は動物実験施設のX線照射装置の故障により、当初予定していた動物実験をスケジュール通りに開始することができなかった。そのため、用いる動物実験施設、マウス系統を変更し、2019年度以降、新たに動物実験を行う予定であるため、次年度使用額が生じた。2019年度以降、当初計画していた規模と同様の動物実験を、次年度使用額を使って進める予定である。
|