研究課題/領域番号 |
18K18198
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
砂押 正章 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究員(定常) (70756030)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線発がん / 組織内微小環境 / マウス胸腺リンパ腫 / 系統差 |
研究実績の概要 |
放射線被ばくによる発がんには、がんの起源細胞に生じる遺伝子異常だけでなく、その細胞を取り囲む組織内微小環境が関与すると考えられている。本研究では、放射線被ばく後の組織内微小環境の発がん感受性に関わる分子メカニズムを、放射線発がんモデルであるマウス胸腺リンパ腫を用いて明らかにすることを目的としている。 2020年度は、2019年度に開始した、飼育環境やブリーダーから供給されるマウスのコロニーの変化による胸腺リンパ腫の発生率への影響を確認するための発がん実験を完了させた。結果として、本実験で用いたC57BL/6系統とC3H系統のマウスでは、それぞれ先行研究と同様の頻度で胸腺リンパ腫が発生する再現性を確認できた。そのため次の実験として、発がん感受性を変化させるメカニズムを明らかにするために、放射線照射後の発がん途中の2系統間の特徴の違いについて解析を進めている。具体的には、放射線照射による発がん処理後、2日から5ヶ月まで経時的にマウスの解剖を行い、胸腺、大腿骨、脾臓、末梢血の血球成分データ等を採取した。進捗状況としては、2020年度内に照射後5ヶ月までのサンプルの採取を完了し、現在、得られたサンプルおよびデータについて詳細な解析を進めているところである。 対外活動としては、WEB開催となった日本放射線影響学会第63回大会に参加し、組織内微小環境と造血細胞の相互作用について情報収集を行った。放射線被ばく後の発がんメカニズムを考える上で有益な最新の知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年度、動物実験施設のX線照射装置の故障により、動物実験施設の変更を余儀なくされたため、動物実験計画に遅れが生じている。加えて、2020年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響を受け、実験計画に更なる遅れが生じた。そのため、事業期間を2021年度まで一年間延長し、本事業を遂行することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、組織内微小環境等のサイトカイン測定条件を決定し、胸腺リンパ腫の発生実験から得られたデータを基に、放射線照射後着目すべき時期の、放射線発がんに関わるパラメータを明らかにし、実際に放射線照射後の発がん過程における2系統間の違いの検出を試みる。また、本研究室においてこれまでに行われた発がん実験のデータや解析サンプル等も活用し、本研究を加速させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、動物実験施設のX線照射装置の故障により、当初予定していた動物実験に遅れが生じた。また2019年度は、所属機関の意向により、文部科学省に行政調査員として出向することになったため、研究業務にかける時間が大幅に減少した。加えて、2020度は新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響を受け、実験計画に遅れが生じた。そのため、事業期間を2021年度まで一年間延長し、本事業を遂行することとし、次年度使用額が生じた。 事業期間を延長することにより、可能な限り当初計画していた研究を実施し、本研究課題における研究成果の最大化を目指す。
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