研究課題
放射線被ばくによる発がんには、がんの起源細胞に生じる遺伝子異常だけでなく、組織内微小環境が関与すると考えられている。本研究では、放射線被ばく後の組織内微小環境の発がん感受性に関わる分子メカニズムを、胸腺リンパ腫好発系であるC57BL/6N系統と抵抗性であるC3H/HeN系統を用いて明らかにすることを目的としている。2021年度は、2020年度に採取した、放射線照射後のマウス胸腺、脾臓サンプル、並びに末梢血の血球成分について、2系統間の経時的な組織応答の違いの検出を試みた。照射後、胸腺については、両系統において萎縮が観察され、その後、C57BL/6N系統では、C3H/HeN系統に比べ、劇的な重量の増加を示した。脾臓については、萎縮後、C57BL/6N系統では劇的に重量が回復したのに対し、C3H/HeN系統では緩やかに回復した。また、末梢血成分については、血小板数の変化に2系統間の違いが検出された。これらの照射後の組織応答の違いは、がんの起源細胞を取り巻く組織内微小環境が、発がん感受性の違いと関連して大きく異なる可能性を示唆する。今後は、発がん感受性や造血能と組織応答との関連を明らかにするため、サイトカイン等の動態に関する詳細な知見を得ることが重要であると考えられる。対外活動としては、WEB開催となった第18回幹細胞シンポジウム、日本放射線影響学会第64回大会、環境科学技術研究所主催の30th ANNIVERSARY International Symposium 2021 in Aomori(国際学会)に参加し、被ばく後の胸腺の細胞動態に関する研究成果の発表、並びにがんの起源細胞とその細胞を取り巻く組織内微小環境の両方の観点からの情報収集を行った。放射線被ばく後の発がんメカニズムを考える上で有益な情報を得ることができた。
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Biology
巻: 11 ページ: -
10.3390/biology11030449