本研究では、日本沿岸に分布する鯨類を対象に環境汚染物質の細胞毒性評価に関する研究を推進した。瀬戸内海のスナメリから培養した線維芽細胞を用いて、鯨類の体内に残留するポリ塩化ビフェニル(PCBs)等が細胞死を引き起こすことを明らかにした。また、茨城県鉾田市に集団座礁したカズハゴンドウから体細胞を培養し、神経細胞へ直接分化誘導することに成功した。誘導神経細胞をPCBsの代謝物に24時間曝露したところ、80%の細胞で能動的な細胞死(アポトーシス)が観察され、神経変性疾患に関連する遺伝子の発現量が変動するという知見も得られた。本研究成果から、環境汚染物質への曝露による鯨類の健康影響を指摘した。
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