液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を用い、リグニン熱分解生成物の分析を試みた。しかし、当研究室で保有しているLC-MS/MSの性能上、定量レベルに達しておらず、ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/MS) による定量分析に切り替え、定量可能な成分に絞ってPM2.5等のエアロゾル試料の化学分析を行った。その際、リグニン熱分解生成物だけでなく、セルロース熱分解生成物(levoglucosan、mannosan、galactosan)やβ-sitosterolについても定量を行った。3パターンの昇温速度(2 ℃/min、10 ℃/min、15 ℃/min)によりもみ殻を燃焼させたところ、エアロゾル中に含まれるセルロース熱分解生成物やリグニン熱分解生成物のほとんどの成分において、有機炭素(OC)と同様に昇温速度が大きいほどそれらの排出係数 [μg/g-rice husk] が大きくなる結果が得られた。また、バイオマス燃焼の発生源プロファイル [mg/gC-OC] についても比較を行った(もみ殻、稲わら、泥炭燃焼のデータ比較)。その結果、リグニン熱分解生成物の発生源プロファイルが各バイオマス燃焼により異なることから、PM2.5等の大気エアロゾルに寄与するバイオマス燃焼の種類を特定する際にリグニン熱分解生成物に着目することは有用であると考えられる。しかし、本研究において、昇温速度が異なるとリグニン熱分解生成物の発生源プロファイルが変化し得る結果を得ている。また、バイオマス燃焼発生源から遠く離れたリセプターでのリグニン熱分解生成物の有効性については十分に検証されておらず、これらについては今後さらなる取組みが必要である。
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