研究課題/領域番号 |
18K18205
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
三小田 憲史 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80742064)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 漂流マイクロプラスチック / 海洋環境 |
研究実績の概要 |
近年、水環境に残留する漂流ごみによる環境汚染が世界的な問題となっている。漂流プラスチックには製造プロセスに由来する化学物質だけでなく、漂流過程で蓄積する汚染物質による環境影響も懸念されているが、その実態については現状がまだほとんど解明されていない。また、蓄積した汚染物質は環境中において各種反応を受けることでその一部が変質している可能性も考えられる。そこで本研究においては、主に沿岸域を漂流するマイクロプラスチックと呼ばれる微小プラスチックごみによる汚染に着目し、マイクロプラスチックを媒体とする化学物質汚染の実態とその挙動解析を試みている。平成30年度は東京湾を中心にして野外における現地調査を行い沿岸域からマイクロプラスチック試料の採取を行った。海水表層の漂流物をプランクトンネットを用いて船上から採集し、実験室にて顕微鏡を用いてソーティングを行ってサイズを測定した。さらに、FT-IRを用いて漂流物の成分を解析した。その結果、環境中におけるマイクロプラスチックの幅広い分布を確認するとともに、その材質的、粒径的特徴の一端を明らかにした。環境中からは1ミリ以下の小さいサイズのプラスチックが成分を問わず全体的に多く検出された。また、プラスチックの形状はほとんどが破片状であった。以上のことから、環境中に放出されたプラスチックの微細化が進んでいる可能性が示唆された。また、成分別ではポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンを成分とするマイクロプラスチックが検出され、特にポリエチレンの割合が高かった。また、採取したマイクロプラスチックに蓄積している汚染物質を評価するため、環境中に遍在して疎水性および発がん性の強い多環芳香族炭化水素(PAHs)とその類縁物質を対象にして進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は主に漂流プラスチック試料の採取および化学分析の実施までを予定していたが、分析および考察までが完了していないことから、やや遅れている。その理由として試料採取場所の選定や採取方法の検討などに時間を要したことなどが挙げられる。一部の試料については抽出操作に供試しており、PAHsの測定および解析を進めている。二次的に生成した分解生成物の存在も示唆されている。詳細な解析は次年度に引き継いで行う。分析については検討実験においては良好な回収率が得られているが、妨害成分のピークも見られたことから、必要に応じて分析手法の見直しも行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き現地調査と化学分析を効率的に行い、主に多環芳香族炭化水素とその類縁物質に着目して、マイクロプラスチックに蓄積している化学物質汚染の成分や濃度を明らかにしていく。また、同時に採取した水試料の化学分析も進めていく。これらの結果から、プラスチックに蓄積した化学物質の動態とその環境影響について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入のために年度の途中で前倒し請求を行ったが、化学分析が完了しなかったことから結果的に試薬やその他の消耗品に使用する支出金額が少なくなったため。
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