現在、水環境におけるマイクロプラスチックによる環境汚染と、物理的・化学的な影響が懸念されている。化学的な影響ではプラスチック添加剤の水環境への溶出だけでなく、漂流過程における有害化学物質の物質吸着と水生生物への曝露も危惧されている。本研究では当初よりマイクロプラスチックに蓄積した汚染物質の環境動態、特にプラスチックを反応場とした汚染物質の化学反応の評価に念頭に置きつつも、マイクロプラスチックの存在実態について十分に明らかにされていない現状を考慮し、河川や沿岸域においてマイクロプラスチックのフィールド調査を行い、サイズやポリマー成分といった基礎的データから発生源や動態、環境影響について考察した。さらに漂流マイクロプラスチックに吸着している汚染物質の分析を行った。その結果、マイクロプラスチックは沿岸域だけでなく都市部の河川からも検出され、水環境中に遍在していることを報告した。また、沿岸域の漂流マイクロプラスチックからは疎水性の汚染物質である多環芳香族炭化水素が検出され、プラスチックの材質によってその検出強度が異なっていた。また、我々の過去の研究において多環芳香族炭化水素の光反応生成物と同定されている一部の物質も検出された。本研究の結果から、マイクロプラスチックの漂流過程で蓄積した汚染物質が光化学反応によって転換している可能性が示唆される。しかしながら、このような物質の発生源や生成プロセスについてはまだ解明されておらず、今後も継続的な調査が必要と考えられる。
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