研究課題
平成31年度は、昨年度得られた試料:下水処理水に8-10日間曝露され、その後脱塩素水で飼育された試験魚(メダカ・コイ・ティラピア)を対象に、医薬品類やパーソナルケア製品に含まれる生理活性化学物質(PPCPs) 78種を分析し、生物濃縮係数(魚/環境水の濃度比、以下BCF)、取込速度定数、排泄速度定数、消失半減期を算出した。また、血漿蛋白結合率の測定および肝S9の作製と代謝試験の実施を試みた。ホール組織におけるHaloperidolのBCFは、メダカ(2,000)>ティラピア(650)>コイ(320)の順に高値を示し、種間差が認められた。ティラピアの血しょうにおけるHaloperidolとChlorpheniramineのBCFは、それぞれコイの40倍、130倍高値であり、ティラピア血中への特異的な濃縮性が明らかとなった。生物濃縮係数の実測値(BCFm)と化学物質の脂溶性に基づき予測される生物濃縮係数(BCFp)を比較したところ、58%以上の物質においてBCFmは誤差1桁以内の精度で予測可能であることが示された。一方、残余42%については、BCFmがBCFpに比べ1-2桁高値を示す物質とBCFmがBCFpに比べ2-4桁低値を示す物質が存在した。これらの要因として、前者の場合では、取込速度定数が比較的高値を示したことから、脂質以外への分配(特異的なタンパク結合など)、後者の場合では、排泄速度定数が比較的高値を示したことから、速やかな代謝・排泄が推察された。in vitro試験で測定したChlorpheniramineの血漿蛋白結合率は、ティラピアで95-98%、コイで61-74%と、蛋白非結合型の割合に約10倍差がみられた。本結果は、魚類における医薬品類のADMEを理解することが、曝露影響の予測に重要であることを示している。ティラピアの肝S9を用いた代謝試験は現在実施中である。
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Science of The Total Environment
巻: 664 ページ: 915~926
doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.02.090
巻: 690 ページ: 683~695
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http://kanka.cmes.ehime-u.ac.jp