研究課題/領域番号 |
18K18209
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
工藤 慎治 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (70637769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 微小粒子状物質(PM2.5) / 道路沿道 / 粒子組成 / 自動車交通量 |
研究実績の概要 |
本研究では、日中と夜間の大気状態や通勤と帰宅時間帯を考慮した粒子成分の環境動態を把握することを目的とし、住宅地の近隣道路にて微小粒子状物質(PM2.5)の大気観測を行った。今年度は、①調査地の道路の交通状況を確認し、②道路沿道大気中のPM2.5の主要成分を明らかにした。 夏季に道路沿道大気およびバックグラウンド大気の2地点においてPM2.5の捕集を平日10日間実施した。フィルターの捕集時間は1日を4つの時間帯(通勤時間:6時~9時、日中:10時~16時、帰宅時間:17時~20時、夜間:21時~翌日5時)ごとに分けた。観測期間中の道路の自動車走行台数は、30分単位で「乗用車」および「大型車(バス・トラック)」について集計した。 交通量の調査結果から、平日の乗用車の交通量は通勤および帰宅時間にかけてピークを示し、大型車の交通量は日中のピークが夕方まで継続していた。本研究の調査地ではほとんどの時刻において大型車よりも乗用車の走行台数が多いことが分かった。また、休日の交通量は平日の交通量の傾向と大きく異なることを確認した。これらの交通量の特徴は、自動車を利用した職場への通勤・帰宅、買い物等の人間活動の影響が反映されたものであり、次年度以降に行うPM2.5観測のフィルターの捕集時間の時刻区分の妥当性が裏付けられた。 PM2.5捕集試料は炭素成分および水溶性イオン成分の分析を行い、2地点で得られたPM2.5の粒子組成を比較した。道路とバックグラウンドでは元素状炭素成分を除き、PM2.5の主要成分に大きな違いは見られなかった。分析したPM2.5の主要成分濃度は夜間で低くなっていたものの、それらの組成比は4つの時間帯であまり変化しておらず、有機炭素濃度が6~7割、イオン成分濃度が3割程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測および分析は、ほぼ当初の計画通りに進行している。2018年の夏季観測により、調査地の道路状況を把握でき、フィルター捕集の時間区分の妥当性が確認できた。PM2.5を捕集した試料の微量分析や次年度以降の四季観測の準備についても順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年の夏季観測の試料に対して、微量成分(無機元素および有機成分)の分析を実施する。分析した試料中の微量成分の挙動について4つの時間帯(通勤時間、日中、帰宅時間、夜間)および2地点(道路およびバックグラウンド)の違いから、自動車由来の一次粒子成分および二次粒子成分を考察する。また、同じ時間帯の季節変動について調べるために、道路沿道大気にて四季観測を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に実施した主要成分(炭素成分、イオン成分)の分析を当初は遠方の研究機関で行う予定であったが、近隣の研究機関で分析装置の使用許可が得られたため、分析出張の旅費に未使用額が生じた。 次年度の観測の大気試料については主要成分の分析を検討していなかったが、未使用額を炭素成分の分析の経費に充て、解析データの充足を図る。
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