研究課題
昨年度に実施した現地調査より,東京湾沿岸域においては海砂中に多量の貝化石 (最大で10%程度) が含まれることが明らかになった.このことから,特に沿岸域を対象として,現場にある貝化石の溶解・再沈澱反応を通じた新たな地盤改良技術の構築を目的として研究を進めた.本年度は,様々な粒度の珪砂と貝化石を任意の割合で混合した模擬海砂を作成し,酸を用いた貝化石の溶解と炭酸水素ナトリウム添加による炭酸カルシウム析出までを実験的に再現した.この結果,貝化石は全量の40%程度までは容易に溶解し,炭酸水素ナトリウム添加によって炭酸カルシウムを再形成することが確かめられた.模擬海砂サンプルに対しては,実験の前後で山中式土壌硬度計を用いた強度測定を実施し,炭酸カルシウムの再形成による地盤強度向上の程度を確認した.炭酸カルシウム析出量を1%とした実験では,試料の表面乾燥が進んだ状態で30 kg/cm2を上回る強度が得られ,本手法により高い地盤強度が発現することが明らかになった.SEM/EDSによる上記試料の表面観察では線状の炭酸ナトリウム結晶と粒度の細かい炭酸カルシウム結晶が珪砂の粒間を密に埋めている様子が観察され,このような組織が強度発現に影響していることが示唆された.しかし,本研究で作成された試料は,水にさらされると徐々に強度が低下していく傾向が観察されており,耐水性をどのように向上させるのかが今後の課題として挙げられる.
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