研究課題/領域番号 |
18K18214
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
筒井 裕文 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (70620649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アンモニア酸化細菌 / 抗菌薬 / 群衆構造解析 / T-RFLP法 / 抗菌薬耐性機構 |
研究実績の概要 |
2018年度は,アンモニア酸化細菌(AOB; Ammonia Oxidizing Bacteria)群集構造解析手法の最適化と,抗菌薬曝露にともなう阻害影響の評価手法の確立に関する取り組みを実施した. 前者については,微生物群集構造解析手法であるT-RFLP法について,AOBのamoA遺伝子を標的とした場合に適した制限酵素の種類について検討を行った.河川水,活性汚泥,そして微生物製剤内のAOBを対象に調査を行ったところ,多くの既往研究で用いられている制限酵素であるTaqIでは得られるピークが少なく,解析手法としての解像度に乏しいことが明らかとなった.そこで,Genebankに登録されているAOB釣菌株のamoA遺伝子(全57株)をもとにin silico解析を実施したところ,TaqIでは6つのピークに分類できたものが,AciI+FokIもしくはAluI+MboIIによるdouble digestionを行うことで14の断片に分けられることが明らかとなり,使用する制限酵素を変更することでT-RFLP法の解析効率を大幅に向上することが可能であることを示した.一方,後者については活性汚泥からのRNA抽出から逆転写までの実験条件を構築するにとどまった. さらに,従来の計画に加えて,本研究室で釣菌されたレボフロキサシン(LVFX)耐性AOB株の単離に成功したため,世界でまだ報告例のないAOBのフルオロキノロン耐性獲得メカニズムを明らかにすることを目的として全ゲノム解析に供した.得られた16S rRNA遺伝子配列から,この釣菌株はNitrosomona europaea/eutrophaクラスターに属することが明らかになったほか,フルオロキノロン耐性に深く関連すると言われているジャイレースA遺伝子の配列を得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T-RFLP法を用いたAOBの群集構造解析手法に関して,使用する制限酵素を含めて確立することが出来た.また,本研究室で釣菌された新規LVFX耐性AOB株について全ゲノム解析に供することで,幅広い遺伝子配列を獲得することができ,その系統学的な位置づけを明らかにしたほか,LVFX耐性に関係する遺伝子配列を獲得することが出来た.このことから計画以上に世界的に報告例のないフルオロキノロン耐性獲得機構について重要な知見を得ることが出来た.一方で,RNA実験環境の構築に時間を要したことから,各種抗生物質がアンモニア酸化細菌に及ぼす阻害影響の検討が予定よりも若干遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に確立した群集構造解析をもとに,2019年度は実下水処理場から採取した活性汚泥に対する抗生物質の阻害影響を調査する実験を進めることを計画している.そのために,実験環境の構築を早急かつ重点的に進め,実下水処理場より採取した活性汚泥を用いることで抗生物質のAOBに対する阻害影響を幅広く調査する.さらに,中長期的な抗菌薬存在下でのAOBの集積培養および単離に取り組み,抗生物質に対する感受性の違いの要因の解明に取り組む.以上の計画を効率的に進めるために,実験機器を購入するなど実験環境の構築に重点的に予算を充てる予定である. また,2018年度の検討で得られたLVFX耐性アンモニア酸化細菌のフルオロキノロン耐性獲得機構について,他のグラム陰性のフルオロキノロン耐性菌とのアミノ酸配列の比較を行うことでより詳細な検討を進めていく予定である. 以上の検討を進めることで,国内での学会発表に加えて,国際誌への論文投稿の準備を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費用が当初に予定していた額よりも少額であったため,当初の予定と比較して旅費の計上が少なくなった. 生じた次年度使用額は,次年度の物品費と合わせることで,RNA解析試薬や研究遂行に必要な実験器具の購入に充てる予定である.
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