研究課題
未利用資源であるセルロース系バイオマスからの原油代替化合物生産(バイオリファイナリー)を実現するために、セルロース系バイオマスの効率的分解を達成する必要がある。細菌Clostridium thermocellumはセルロース系バイオマスの構造や構成成分を認識し、遺伝子発現調節因子(σ因子)を介して、その分解に適した多種の分解酵素を分泌する。本研究では、σ因子の機能を明らかにすることでC. thermocellumのバイオマス分解酵素生産の調節メカニズムを解明する。C. thermocellumのσ因子(sigI7)遺伝子構成的発現株では、47つの糖質関連酵素遺伝子の発現が促進、8つの糖質関連酵素遺伝子の発現が抑制されていることを、トランスクリプトーム解析によって明らかにした。sigI7発現株の培養液のセルロース系バイオマス分解活性は、野生株のものより小さかった。セルラーゼ活性には変化がなかったが、キシラナーゼ活性などが低下していることがわかった。この株の培養液中の分子量約75kDaおよび約50kDaのキシラナーゼが減少していることを、SDS-PAGEとキシラナーゼ活性染色により確認した。C. thermocellumは100以上の糖質関連酵素を用いて効率よくセルロース系バイオマスを分解するが、どの糖質関連酵素の活性がセルロース系バイオマス分解活性に重要なのか、明らかでない。ここまでのトランスクリプトームや活性染色による結果を踏まえて、sigI7発現株で減少している糖質関連酵素を推定した。糖質関連酵素遺伝子Clo1313_1002またはClo1313_0522から調製したリコンビナントタンパク質は、セルロース系バイオマスの分解活性をほとんど示さないが、sigI7発現株培養液に添加することで、そのセルロース系バイオマス分解活性を復帰できることを明らかにした。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
FEMS Microbiology Letters
巻: 366 ページ: fnz145
doi: 10.1093/femsle/fnz145
Nature Plants
巻: 5 ページ: 681-690
10.1038/s41477-019-0464-2