研究課題/領域番号 |
18K18222
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 亘 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 学術研究員 (60795988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 河川合流点 / 河床単位 / 生物多様性 / 河床地形 |
研究実績の概要 |
本年度は主に,合流点における水生生物の分布パターンと河床地形の出現パターンの現地調査と,水理模型実験による合流条件と河床地形の関係解明に関する研究を進めた. 現地調査の結果(n=42),合流区間は,非合流区間に比べて,生息する在来の魚種数や多様性,河床地形(瀬,淵など)の多様性が有意に多かった.特に,魚類種数と河床地形の多様性には強い正の相関があったことから,河川の合流点区間は,様々な河床地形に生息する魚類(例えば,淵に生息する遊泳魚や早瀬に生息するヨシノボリ類など)が同一区間内で採捕しやすいためと考えられる.魚類の保全を考えるうえで,合流点は,多様な種を効率よく保護できる区間として注目に値する. 合流点における河床地形の出現パターンから,合流区間でハビタットの多様性が増加する要因として, 二つの事由が考えられた.一つは,合流点特有の水理によって,ハビタットが形作られることである.具体には,合流点における逆流域が合流河川の間や合流により流れが偏寄した箇所に出現し,よどみやワンドを形作る.合流する支流が合流後に川幅が増加することにより土砂を堆積し,合流直前に瀬を形作る.流れのぶつかる箇所に洗堀領域が出現し淵を形成するなどのパターンが観察された. また,水理模型実験により,対称型(Y型)の合流と非対称型(ト型)の合流において,合流河川の流量比に対する河床地形の形成パターンが異なることが分かった.対称型の合流の場合,合流する河川の流量比が同程度の時,流れの偏奇が少なく平面的に単調な河道となった.一方で非対称型の合流の時,流量比が一方に偏る場合に流れの偏奇が少なく平面的に単調な河道となった.他方,洗堀による淵の深さは,対称型の合流の場合も非対称型の合流の場合も,合流する河川の流量比が同程度の時最も大きくなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた現地調査による生物種と河床地形の観測は実施できている.ただ,堰などの人為的改編を受けた合流点が想定より多く,合流によって形成される河床地形パターンが実測にて十分なサンプル数が得られない恐れが出てきたため,合流河川の水理模型実験により合流条件と河床地形の関係を解明することとした.今年度は,当初予定にない模型実験の実施を組み込んだ.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,合流点の合流条件と河床地形の関係の解明と,それに伴う生物の生息状況の関係解明とモデル化を行う.依然サンプル数が不足している現地調査の継続と,水理模型実験による合流条件と河床地形の関係解明についても,洪水時などの実験ケースを追加していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査に基づき,合流点の合流条件と河床地形の解明のために水理模型実験をすることとした.その計画や作成のために期間を取られたため,当初予定よりやや現地調査地点数が減少した.減少した現地調査地点数については,今年調査を行う予定である.
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