我が国の河川合流部の改修技術については,どのように河道を計画すれば良好な河川環境が保全・創出されるのか学術的,技術的知見が不足しており,環境に配慮した河川改修技術及び自然再生技術が確立されていない.河川の合流部は多様なハビタットを創出し,生物種のホットスポットとして高い保全価値を持つ反面,治水上の要点でもあることから今後ますます合流点における人為的なインパクトは増加していくものと考えられ,環境に配慮した改修技術の確立は喫緊の課題である. 本研究では,合流点における水生生物の分布パターンと河床地形の出現パターンの現地調査,合流条件の異なる水理模型実験,近代に河川改修された合流点における河床単位(瀬や淵のこと)の分布変化を明らかにした.結果,合流区間は,非合流区間に比べて,生息する在来の魚種数や多様性,河床単位の多様性が有意に多いことが確認された.特に,魚類種数と河床地形の多様性には強い正の相関があったことから,河川の合流点区間は,様々な河床地形に生息する魚類が同一区間内で採捕しやすいためと考えられる.魚類の保全を考えるうえで,合流点は,多様な種を効率よく保護できる区間として注目に値する.また,現地調査から合流点特有の河床単位出現パターンを見出した.また,近代に改修を受けた合流点の流れの解析化から,本流と支川の合流角度を小さくなるよう改修された合流点では合流性の淵の面積が減少し,支流側の川幅の拡張により支流側の河床単位の単純化,合流点直前地点の早瀬の減少が生じ,物理環境の多様性が減少していることが分かった.
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