本研究では、外来植物が植食者を介して在来植物に与える影響を、原産地と侵入地で比較し、さらに植食者の地理的な分布の違いで比較を行った。 具体的には、セイタカアワダチソウとセイタカアワダチソウと同所的に生育する在来キク科植物を材料に用いて、セイタカアワダチソウが植食者を介して在来キク科植物に与える影響が、1) 原産地(北米)と侵入地(日本)で異なるか、2) 外来植食者のアワダチソウグンバイの分布の有無でどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。北米と日本において、それぞれアワダチソウグンバイの分布の有無が異なる2箇所の圃場を用いて、在来植物のみの単植の場合とセイタカと混植した場合で、食害量と植物の成長・繁殖形質を比較した。 日本では、セイタカアワダチソウと混植した場合に在来植物上のアワダチソウグンバイによる食害が増加し、植食者を介した見かけの競争が検出された。2年目には、アワダチソウグンバイの未分布地においてもセイタカアワダチソウと混植した場合に在来植物上の食害が増加し、植食者を介した見かけの競争が検出された。また、セイタカアワダチソウと混植した場合に在来植物の葉数増加率や花数が減少し、さらにアワダチソウグンバイの分布地では花数の減少の程度が強まっていた。一方で、北米では、セイタカアワダチソウとの混植によって、アワダチソウグンバイの食害の減少が見られ、在来植物の花数に増加が見られた。 これらのことから、侵入地においてセイタカアワダチソウは在来植物の繁殖に対して直接的な競争による負の影響に加えて、外来植食者と在来植食者の食害を介した見かけの競争による負の影響が見られることが明らかになった。
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