これまで茨城県内の河川草地4サイトで2年間継続して行ってきた調査により、マメ科およびキク科の特定の外来植物種が春~初夏と秋に膨大な量の花資源(花蜜糖および花粉)を生産していることが明らかとなった。一方、これらの種への送粉昆虫の訪花数は、春を除き、資源量の少ない種と同程度かそれ以下に留まり、送粉昆虫の餌としては必ずしも常に重要ではない可能性が示唆された。このことは、「リソースリッチな外来植物が送粉昆虫を誘引し、これによって近傍で咲く資源の少ない在来植物への立ち寄り訪花が増える」という研究開始当初に立てた仮説が成り立たたない可能性を示している。本年度は、これまで得たデータを用いて外来植物の開花密度と1m圏内で同時期に開花している在来植物への訪花数との関係を解析した。その結果、外来植物の開花密度と在来植物への訪花数との間に正の相関は確認されず、外来植物が在来植物への立ち寄り訪花を増やすという仮説は棄却された。反対に、外来植物への訪花数と近傍の在来植物の開花数との間にはゆるやかな正の相関があり、在来植物が送粉昆虫を誘引し、それによって外来植物への訪花が増加している可能性が示唆された。花資源生産に貢献した植物種の多様性と、送粉昆虫が実際に訪花した植物種の多様性をシャノンの多様度指数を使って比較した結果、前者の多様度は特定の少数の外来植物種が大量の資源を生産するというパターンを反映して低かったが、後者の多様度はそれよりも有意に高かった。この結果は、河川草地では一部の外来植物由来の花資源が供給量全体の大部分を占めているにも関わらず、送粉昆虫はこれらの資源には依存せず在来植物を含む様々な植物を利用していることを示している。本研究の一連の成果は、当初の予想とは異なり、外来植物ではなく在来植物の送粉系における重要性を示唆するものとなった。現在論文および関連データの公表準備を進めている。
|