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2019 年度 実施状況報告書

河川性魚類のダム湖の移動可能性と孤立個体群の存続に必要な生息域サイズの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K18226
研究機関国立研究開発法人土木研究所

研究代表者

末吉 正尚  国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (70792927)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードダム湖 / 分断化 / 魚類 / 個体群 / 生息域サイズ / 孤立
研究実績の概要

本研究の目的は、ダム湖が河川性魚類の移動を阻害となることで、ダム湖に注ぐ支川の魚類個体群が孤立し、その絶滅リスクが増加するかどうかを検証することである。2018年度の成果によって、ダム湖に注ぐ支川の長さと種数に正の関係性が確認され、出現種のうち約50%の種が支川長が短くなると消失する傾向を示した。ただし、この関係性がダム湖による分断化の影響なのかどうかは不明のため、2019年度は流水の河川に注ぐ支川と比較し、ダム湖の有無が支川長と魚類群集・個体群との関係性に影響を及ぼすかを検証した。その結果、流水の本川に注ぐ支川では、ダム湖に注ぐ支川に比べて種数が多く、2kmの長さの支川で約3.6種も差があることが推定された。またダム湖の有無に関係なく支川が短くなると消失する種や、ダム湖が存在することでより消失しやすくなる種、ダム湖支川では全く確認されなかった種など種によって異なる傾向が確認された。このことから、ダム湖の存在が支川個体群の絶滅リスクを増加させている可能性が示唆された。
上記のパターンがダム湖の移動阻害によって生じているものなのかどうかを検証するため、支川間の遺伝的交流から移出入評価を試みた。カワムツ、オイカワ、カワヨシノボリ、アブラハヤを対象に近縁種のマイクロサテライトプライマーで増幅の可否を検証したが、個体群によっては増幅がうまくいかなかった。そこで、種に限らず小スケールでの遺伝的な変異が検出可能な解析手法に切り替えて現在検証中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本来の予定では、建設年代の異なる複数のダム湖を対象に経過年数による効果を二年目で検証する予定であったが、他研究者との議論においてダム湖のない河川との比較の重要性を指摘されたため、2019年度はダム湖の有無による違いの評価を優先し、建設年代による違いは2020年度に延期した。また、2018年度に一部の支川で遺伝子増幅が確認できたプライマーが別支川の個体では増えないなどの解析上の問題もあり、遺伝的評価の進捗が遅れた。当初の計画内容自体は遅れているが、ダム湖の有無による影響を明確に示すことができた点で本研究の目的達成に近づいた。

今後の研究の推進方策

ダムが建設されてからの経過年数に応じて、孤立個体群の絶滅リスクが増加することが予想される。これまでに調査したダムは建造から50年以上経過しており、個体群の局所絶滅がより顕在化していた可能性があるため、2020年度は、建設年数の新しいダム(候補:2007年建設揖斐川徳山ダム)の支川で魚類調査を行い、孤立年数に応じた支川魚類相の変化を検証する予定である。解析が滞っていた遺伝的評価に関しては、種に限らず高い遺伝的変異が検出可能な一塩基多型解析(MIG-seq法など)に切り替えて解析を進める予定である。古いダムでは遺伝的多様性が低く、個体群間の分化がより進んでいると予想されるが、新しいダムでは遺伝的な分化がまだ進んでいないと予想される。

次年度使用額が生じた理由

遺伝子解析のうち、シーケンスを外注で行う予定であったが、その前段階で解析が滞ってしまったため、該当予算を次年度へと繰り越すこととなった。次年度計画している解析は遺伝子抽出まで進んでいれば解析可能なため、確実に使用することができる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 潜在分布範囲に基づく生息域の大きさと河川性魚類の在不在の関係性2019

    • 著者名/発表者名
      末吉正尚, 森照貴, 永山滋也, 石山信雄, 中村圭吾, 萱場祐一
    • 学会等名
      応用生態工学会第23回大会

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公開日: 2021-01-27  

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