本研究は、次世代エネルギーシステムの導入が社会全体のエネルギー効率改善へもたらす影響をエネルギーの「質」を考慮したエクセルギー指標を用いて分析することを目的とした。具体的には、産業連関表におけるエクセルギーの定義を定め、産業連関表に対応したエクセルギー消費量データベースを構築し、再生可能エネルギー発電と水素エネルギーシステムを対象としたケーススタディを実施した。 その結果、次の3点が示された。第一に、産業連関表の各部門におけるエネルギー需要量(ボイラ、空調、動力など)とエネルギー供給量(電力、ガス、熱など)を詳細に推計し、エクセルギー指標を適用したことで、従来のエネルギー供給側からのアプローチに、新たに需要側の消費特性を反映した分析が可能となった。第二に、地熱、風力、太陽光発電のライフサイクル全体のエクセルギー収支を分析し、「質」の低い再生可能エネルギーから「質」の高い電力などを生産し活用することが、社会全体のエネルギー効率の改善に資することを示した。第三に、再生可能エネルギー由来の水電解水素は、既存の化石燃料由来の改質水素と比べて、エネルギー消費量の視点では水電解水素に多くの課題があるものの、エクセルギー指標では水電解水素の利用が将来のエネルギー需給システムの効率の改善に繋がる可能性を示した。 なお、水素エネルギーシステムの分析は、トヨタ・モビリティ基金(研究番号:2018-10)「水素エネルギーの効果的な利用に向けたライフサイクルエクセルギー分析」と本研究の共同の成果である。
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