安価なコストと食用・工業用・バイオ燃料への広い用途から最も重要な植物油種であるパームオイルの生産において、生産地におけるプランテーションに伴う森林減少や、それを発端とする生物多様性の損失、二酸化炭素の増加、児童労働といった国際的な社会環境問題が深刻化している。今後パームオイル需要は人口増や温暖化対策を機にさらに加速化することが予想されており、世界のパームオイル需要の緩和はこれらの問題解決に向けた必須事項である。こうしたパームオイルを必要とする商品の最終需要先は先進国が中心となっており、日本も例外ではない。しかしながら、パーム油の用途は加工食品や菓子類、外食産業への一次利用と、化粧品や医薬品、洗剤等の化学工業製品への二次利用が存在し、単にパームオイルの輸入量を追うだけではその国の真のパームオイル依存量を把握できない問題が生じている。 当該年度では、国連食糧・農業開発機構 (FAOSTAT)における「Commodity Balances - Crops Primary Equivalent」および「Detailed trade matrix」を用いて構築した国際パームオイル (パーム油 + パーム核油) フロー構造を国際産業連関表に組み合わせることで、日本の最終需要による間接消費量の時系列分析を行った。また、この分析結果に基づいて間接的な環境負荷構造を推計し、それらの成果をまとめた論文が査読付き国際誌に掲載された。一方で、家計消費構造と環境負荷の関係を解析する上で、日本の家計消費需要および人口統計を活用した関連研究を実施し、それらの成果をまとめた論文が査読付き国際誌に掲載された。なお、国際パームオイルフローの計量分析による推定および日本の家計による詳細なパームオイル依存構造の推計については、引き続き解析を続けており、今後の課題として引き継がれている。
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