研究課題/領域番号 |
18K18234
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 文子 大阪大学, COデザインセンター, 特任助教(常勤) (40533550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創造性 / 寛容性 / 資源継承 / アートプロジェクト / 地域づくり / デザインシンキング / 農村資源 / 疏水 |
研究実績の概要 |
コロナ禍において、当初予定していた大地の芸術祭や瀬戸内芸術祭でのフィールド調査活動が難しい状況があったが、近辺の調査地域として、豊中市での創造的人材育成活動や、連携が容易であった石垣島ゆがふ国際映画祭にフィールドを代替して、調査研究を進めることができた。 研究計画との対応としては、2年目に予定していた、東条川地域住民に対する質問紙調査、1~3年目に予定していた、東条川地域における創造的地域資源継承の実践を行うことができた。 創造的地域資源の継承については、大阪大学COデザインセンターでの講義ソーシャル・イノベーションを受講した学生とともに、実践を行うことができた。具体的には、デザインシンキングの方法論を用いた共感や価値創造のプロセスを繰り返して実施案を練り上げ、実施案のプレゼンテーション、検討を通した兵庫県や地域住民との協働により、フォトコンテストという形式で行った。twitterを用いた写真の募集や、高校や店舗、寺社を含む地域団体との連携を通して、新たな地域内外のネットワークを構築することができた。このネットワークの構築を通して、これまでの資源継承に重きを置いた疏水活動では得られなかった点として、若年層の参加、女性の参加、SNSの利用、アーティスト(写真家)の参加、イベントに組み込むアイデアの自発的提案、といった要因があり、これらの要因が創造性や寛容性に関わることが示唆された。また、写真を撮る、見るという行為の創造性、創造性や寛容性の定義について、コンテスト来場者に質問紙調査を行い、統計分析を進めている。 さらに、映画鑑賞というアート体験を通した創造性、寛容性の創出について、「石垣島ゆがふ国際映画祭」来場者に対する質問紙調査を行った。創造的な人材育成プロセスを通した、SCの向上や、創造性、寛容性の創出について、「とよなか地域創生塾」で質問紙調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1-2年目の遅れと、コロナ禍による調査地域との連携の困難の影響により、進捗状況がやや遅れている。大地の芸術祭については、地域での活発な活動組織の代表者にインタビューをすることができたが、当該年度に質問紙調査が同地域でできなかった。しかし、当初予定していた「東条川疏水ネットワーク博物館事業」での質問紙調査に加えて、「石垣島ゆがふ国際映画祭」や「とよなか地域創生塾」といった、他の調査地域や調査事例で質問紙調査を複数実施できたため、創造性や寛容性、SCの形成等の質問項目について、結果を比較することができ、より普遍的な結果が得られると考えられる。 また、学内補助金を利用した人件費の大幅な節減により、創造性と脳波の関係について測定実験を追加することができた。質問紙調査の結果と合わせて検討することができれば、ワークショップの創造性や寛容性について、さらに客観的に検討することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙調査は3件(東条川疏水、石垣島ゆがふ国際映画祭、とよなか地域創生塾)実施できたので、これらの結果を比較することで、創造性や寛容性、イベントやプロジェクトの参加を通したSCの変化について、要因を抽出することができる。共分散構造分析を用いて、創造的な地域活動による効果創出メカニズムの描写も進める。 また、大地の芸術祭開催地域(新潟県十日町市)で行った、地域活動における創造性や創造的人材ネットワークに関するインタビューデータについて、テキスト分析と、GISによる地理的影響の検討を進める。東条川疏水地域では、質問紙調査を実施でき、地理情報も質問項目に含まれているので、3種類(定量、定性、空間情報)のデータを揃えることを目指し、コロナ禍の拡大を考慮しながら追加でインタビュー調査を実施することを試みる。 インタビュー調査と質問紙調査、GISによる地理的影響の評価から得られた異なる結果を組み合わせて、混合研究法におけるトライアンギュレーションを行う。 研究成果を国内外の学会で発表するとともに、webサイトを構築し、公表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費について、学内の補助金を利用することができたため、大幅に削減できた。また、この削減を利用して、地域資源の継承に関する創造的な活動(東条川疏水アートプロジェクト)における参加者への影響を測定する新たな方法として、脳波の測定を行い、その経費がその他に計上されている。 また、研究成果の取りまとめが遅れているため、発表に関わる経費(交通費、投稿費用)も未使用である。 次年度も学会開催がオンラインが中心となることが予想されるため、余剰となる交通費は、研究のとりまとめに関わる人件費や研究成果を発表するwebページの構築に活用する。
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