本研究では,公共的意思決定策定過程の委員会における議論で各委員が主張した意見や考え方など態度,その対立,合意に至るまでの過程など意見の構造とその変遷を把握および可視化するためのテキストマイニング手法を開発することを目的としている.2021年度は,発言をカテゴライズし会話の展開を分析する会話分析の手法であるVRM(Verbal Response Modes)を援用した議論の構造を把握・可視化するための手法について検討した. 具体的には淀川水系流域委員会の議事録を対象に,各発言に対してVRMを参考にした発言カテゴリーのタグ付けを行い,発言カテゴリー間の前後関係をネットワークグラフによって可視化することで議論の構造を可視化するとともに,ネットワークグラフの類似性を示す中心化共鳴分析としてコレスポンデンス分析を行うことによって各会期の特徴の把握を試みた. その結果,まず1会期では情報や認識,意見を委員間で共有する構造であったが2会期以降は質疑応答が増加,特に4会期ではこれらの発言の応酬が多く見られる構造であり,続く5会期でも引き続き質疑応答が活発であったが,発言内容をまとめ確認しながら進められるという構造であったことを可視化し把握することができた.
|