研究課題/領域番号 |
18K18238
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
篭橋 一輝 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (60645927)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 関係価値 / 代替可能性 / 手段的価値 / 内在的価値 / IPBES |
研究実績の概要 |
水資源・環境の価値を包括的に捉える上で重要な価値カテゴリである〈関係価値〉(relational value)の倫理学的分析を行った。〈関係価値〉はMuraca (2011)によって提起され、手段的価値(instrumental value)や内在的価値(intrinsic value)とは異なる第3の価値カテゴリであると主張されてきた。生態系サービスに関する国際的な評価枠組みであるIPBESの中でも〈関係価値〉に言及されており、手段的価値/内在的価値という二分法を超えるものとして期待されている。 本研究では、Muraca (2011)を引き継ぎ、「代替可能性」と「関係性」という2軸から関係価値を理論化したHimes and Muraca (2018)の立論を詳細に吟味し、〈関係価値〉の位置づけを明確にした。とりわけ本研究課題との関連で言えば、〈関係価値〉と代替可能性の概念的な関連性を明確にした。 本研究の分析から、以下のことが明らかとなった。第一に、O'Neill (1992)の内在的価値の区分(非手段的/非関係的/客観的の3つ)に従えば、〈関係価値〉が新しい価値を構成すると仮定する限り、内在的価値の一部を構成せざるを得ない。第二に、〈関係価値〉はアプリオリに他の価値と代替不可能であると規定されてきたが、〈関係価値〉という同じカテゴリの中の要素で考えるとき、アプリオリに代替不可能と想定することはできない。第三に、〈関係価値〉は「善き生」を実現するという目的の下で手段的価値も有する。 以上の分析に基づいて、本研究は〈関係価値〉を、①手段的/非手段的、②代替可能/代替不可能、③関係的/非関係的という3つの軸で一般的に定義づけた。すなわち、1)非手段的かつ関係的な内在的価値、2)手段的かつ代替不可能な手段的価値として〈関係価値〉は定義可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、海外渡航・調査や国内での調査などを実施することが困難となってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
海外への渡航と調査を行うことは困難であるため、国内で実施可能な調査とデータ収集を行い、分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査と国内調査が新型コロナウィルスの影響で実施できなくなったため。国内で実施可能な調査に切り替えて、次年度に分析を行う。
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