研究課題
最終年度に実施した研究の成果は以下の通りである。個人の主観的幸福(subjective well-being)に対して水の関係価値(relational value)に関する認識がどのような影響を与えるか、アンケート調査を通じて分析した(回収サンプル:7000)。幸福度や生活満足度、カントリル・ラダー、アフェクトバランスを被説明変数とし、年齢、性別、年収及び水の関係価値に関する18の質問項目を説明変数として順序ロジットモデルで分析した。その結果、以下の示唆が得られた。第一に、被説明変数の種類によらず、「自分が所属するコミュニティを象徴するような水が存在する」という認識を強くする個人ほど、主観的幸福の水準が高くなる傾向があることが分かった。第二に、水の一般的な代替不可能性(かけがえのなさ)に関する認識については有意な結果を得ることができなかったが、経済活動における代替不可能性(資源としての重要性)に関する認識が高い個人は、主観的幸福(心理的な喜び、生活満足度等)も高くなる傾向があることが明らかとなった。第三に、水の関係価値の全てが主観的幸福にポジティブな寄与をするわけではなく、例えば自然が自らの生き方の一部となっているという認識は、主観的幸福と負の相関が見られることが確認された。研究期間全体を通じて、水が持つ多面的な価値と日本のため池の渇水時の水利用・管理の制度的な特質を解明することができた。水資源が各国の経済成長に与える影響に関する計量経済分析では、Hanasaki et al. (2008)の水充足度のデータを用いて、水充足度を向上させる社会経済的要因と、水の希少性を測るためのシャドー価格を推計することができた。また、水の代替不可能性と関連する価値として水の関係価値を推計し、水環境・資源が主観的福祉に具体的な影響を及ぼすことを実証的に明らかにした。
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Journal of Cleaner Production
巻: 310 ページ: 127499~127499
10.1016/j.jclepro.2021.127499