研究課題/領域番号 |
18K18240
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研究機関 | 国土技術政策総合研究所 |
研究代表者 |
益子 美由希 国土技術政策総合研究所, 社会資本マネジメント研究センター, 研究官 (70791317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生物と人との軋轢 / サギ類 / 集団繁殖地 / グリーンインフラストラクチャー / 都市緑地 |
研究実績の概要 |
グリーンインフラは、防災・減災、地域振興、環境をつなぐキーワードとして注目されている。一方で、グリーンインフラの推進に伴って都市域における緑地の増大が予想される中、人の生活圏と生物の生息域が近接し、生物との軋轢も増大することが懸念されるが、そのような課題に対する議論は十分ではない。そこで本研究では、住宅地に隣接する緑地にコロニー(集団繁殖地)を形成し、糞、鳴き声等による迷惑被害を生じる場合がある集団繁殖性サギ類を例に、生物との軋轢解消手法を検討することを目的としている。 初年度にあたる平成30年度は、サギ類コロニーとの軋轢が生じる条件の分析・整理と、軋轢を解消する具体的手法を検討するための野外実践の準備を行った。 具体的には、サギ類が一度コロニーを形成した場所周辺に翌年以降もコロニーを形成する傾向があるという生態的特性を実際の野外データから検証するため、茨城県周辺における過去51年分のサギ類コロニーの位置及び変遷に関するデータをcorrelated random walk法を応用して解析し、サギ類が集団レベルで場所への固執性を示す傾向があることを世界で初めて明らかにした(Mashiko & Toquenaga 2018及び海外学会発表)。また、サギ類コロニーがどのような場所に形成された場合に軋轢が生じやすいか明らかにするため、コロニー周辺の土地利用の違いとサギ類の追払いを意図した行為(爆音機の設置、緑地の伐採等)の有無との関係の分析を行った(国際学会及び国内学会発表)。さらに、軋轢解消策について、コロニー形成期である春期に野外実践を行う準備として、簡易デコイを作成してサギ類の誘導効果を確かめるプレテストを行うとともに、現場実践に向けた調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サギ類コロニーとの軋轢が生じる条件の分析・整理については、サギ類の集団レベルでの場所への固執性を明らかにし、軋轢の長年の繰り返しを生むもととなるサギ類の生態的特性を示すことができた。これは、軋轢を解消するには、軋轢発生地点からサギ類を追払うだけでなく、近隣の代替地への誘導も合わせて行う必要があることを示すベースとなった。軋轢を解消する具体的手法を検討するための野外実践の準備においては、安価な材料での簡易デコイの作成に成功した。一方で、行動観察のための機材設置等には課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
サギ類コロニーの形成期にあたる春期は、各地における軋轢の発生状況の調査や、軋轢を解消する具体的手法を検討するための野外実践を行うとともに、翌シーズンに向けた課題の洗い出しを行う。夏~冬期は、関連情報の分析整理を進めるとともに、軋轢の解消を目指す過程について、現場の状況に応じた複数の具体的なフロー案の整理を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外実践において現地の関係者の協力を得られたことから、当初計上していた機材設置費等の使用額が抑えられた。また、追払いのための爆音機の購入を現地の状況を鑑みて見送ったこと、簡易デコイの自作に成功したこと等から、消耗品費の使用額が抑えられた。これらは、翌年度の野外実践における現地の状況に応じた必要経費や、成果発表(外国旅費、学術雑誌投稿料等)にあてる計画である。
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