【最終年度(令和3年度)の実施内容】サギ類コロニーとの軋轢発生状況について、茨城県と栃木県にて現地調査や行政等への聞き取りを行った。また、サギ類の生態と被害対策に関する栃木県内の自治体担当者向けの研修会にて講師を務め、コロニーの周辺環境や変遷といった条件の違いに応じた軋轢解消アルゴリズムを例示した。コロニーを代替地へ移設する具体手法の開発では、デコイ等を用いた野外試験を継続したものの、移設の成功には至らなかった。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】 (1)サギ類コロニーとの軋轢事例や対処状況の把握:現地での聞き取り等(茨城県、栃木県、愛知県、秋田県)、及びインターネット上での情報収集を通じ、軋轢は全国で発生していること、対処として樹木の伐採、爆音機やドローンを用いた脅かし行為が多く行われている一方、追払い後も念頭にした対処が行われた事例は少数に留まることがわかった(国内学会にて発表)。 (2)軋轢の原因:サギ類の生態的条件の視点から、過去にコロニーのあった場所に毎年繰り返しコロニーを形成する傾向や(国際誌にて発表)、種ごとの習性の違いによってコロニー選択の条件が異なる可能性があることがわかった(国際学会にて発表)。加えて、人の社会的条件の視点から、住宅地までの距離が近いコロニーで軋轢が生じやすいことが確かめられた(国内学会にて発表)。 (3)追払い・誘引手法:追払いは、的確な時期に追払い行為をすれば樹木を伐採せずとも成功する見込みがあると考えられた。一方、誘引は、シラサギ類がデコイに寄って来る行動が確認できたが(国際・国内学会にて発表)、代替地にデコイを設置するのみでは思う様にコロニー移設が成功しない場合もあるとわかり、課題整理を行った。 これら成果をもとに知見を整理したウェブサイトを今後公開し、身近な緑地にて生じうる在来生物との軋轢対処に役立てていく予定である。
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