令和4年度は、8月にインド・アッサム州に渡航した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以降、2年半ぶりの現地渡航であったため、現地のカウンターパートと再開して、この間の大学や調査地域の状況を聞くことができた。また、2021年1月に実施した、COVID-19の村落生活への影響に関するアンケート調査の分析結果を考察するために、調査村の村人に、感染拡大当時の詳しい状況を聞き取りした。事前の予想に反して、COVID-19にともなうロックダウンのせいで収入が減った世帯はなく、多くの世帯で収入が増加しており、パンデミックの影響は限定的であったことが分かった。 また、8月のインド・アッサム州の滞在中に、同年の6月に発生した洪水で被災したナルバリ県の村落を訪問し、被害の状況を視察した。この村の主要住民は非トライブの在来ヒンドゥー教徒(オホミヤ)である。洪水時には建物の床上まで水位が上昇し、住民は1週間以上、堤防上での避難生活を強いられたということであったが、村内の耕地は雨季には何も作付けされていないために被害はなかったことが分かった。この村落では過去に洪水が発生したことを契機に、雨季のハリ稲から乾季のボロ稲へ作付様式が移行しており、その背景に近隣に暮らすムスリム系の住民との交流があることが示唆された。 現地調査を実施したのは1回だけであったが、それ以外の期間は国内でこれまでの調査結果のまとめを行った。その結果、カウンターパートであるゴウハティ大学地理学科の教員と分担執筆した書籍2冊が出版された。ほかにも英語論文の原稿を執筆・投稿しており、今後出版される予定である。
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