本研究は南海産品と呼ばれる、中国と世界の華人市場を最終目的地とする海産物に焦点をあて、それを採捕して生活するタイとミャンマーに暮らす漁民を取り上げる。特に、モーケンと呼ばれる、申請者が2003年より調査研究を続けている漁民である少数民族が主な研究対象となる。彼らが国家と国際機関による管理のもと、地先漁民(タイ人・ミャンマー人漁民)との競合関係のなかで、どのように南海産品を生産(採捕・加工・保存)し、販売しているのかを明らかにすることを目的としている。また、流通先における南海産品の販売状況を把握することも目指している。
2021年度は、2019年末より続いている新型コロナ・ウィルス感染症の影響により、今年度に予定していた国外でのフィールドワークを断念した。他方、文献・資料収集については、邦語による漁業・海産関連の書籍だけでなく、タイ語による資料と記事をウェブ上で渉猟を実施した。今年度も昨年度と同様に、主にオンライン上において積極的に研究活動を行った。Zoomを介した研究者との交流やインターネット上における情報収集をした。ことにスリン諸島のモーケン村落では新型コロナ・ウィルスの感染クラスターが発生し、村が外部から閉じられた。刻々と変わりつつある彼らの状況をSNSで当該者たちから情報を集めた。また一般向けの講演(Zoom利用)や雑誌において、モーケンと南海産品の関わりの歴史、そしてコロナ禍で変化しつつある彼らの生業形態について報告した。
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