今年度に関しては、コロナ禍が完全には終息せず、加えて再度所属先が変更となったこともあり、これまでの研究の遅れを取り戻すことはできなかった。今年度は2022年末~23年初頭にかけて現地イランに再度赴き、改めての史料収集を試みた。マシュハドのイマーム・レザー廟にて一部の文書史料の複写を取得できたが、滞在期間の後半に現地で体調を崩したため、テヘラン、ゴムにおいて満足のいく形での史料収集はできなかった。 今年度の成果に関しては、レザー廟崇敬の拡大に関する史料の分析を主眼ととした論文、ならびに現代に至るまでの同廟の崇敬の変容について記した内容を含む辞書項目を公刊することができた。 全体を通して、史料調査を含む研究成果の公表に向けての作業について、期間内のコロナ禍の拡大や数度の所属先変更により、満足な形で進めることができなかった。研究テーマのひとつであるゴムのジャムキャラーンモスクに関しては、これまでに入手してきたイランにおける新聞等の定期刊行物や議会議事録、地方史史料の読解と内容の検討を進めてきたが、史料収集の問題等もあり、期間内における成果の公表までには至らなかった。現在までに入手し得た資料の分析に基づき、学会報告と論文の投稿を行う目途は立ちつつある。論文の投稿と公刊までの作業を鋭意進めていく行う予定である。また、近代におけるワクフ制度の変容とイマーム廟・イマームザーデに関わるテーマについて、その一部については研究報告の中に織り込むことができた。ただし、こちらも期間内に十全な形で調査を進められたわけではなく、論文の形での成果の公表には至らなかった。まだ関連史料の入手に関して不十分さが否めないが、今後論文化に向けての作業を進めていく予定である。
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