研究課題/領域番号 |
18K18265
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小西 鉄 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60770279)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金融監督の実効性 / 経済権力ネットワーク / 非銀行金融部門 / 国有企業 / 少数株主利益の搾取の慣行 |
研究実績の概要 |
2020年度に引き続き、2021年度も新型コロナ・ウィルスの世界的な蔓延により、インドネシアへの入国は叶わず、現地フィールドワークの実施はできなかった。 そうした状況下で、主に国有企業に対する金融監督の実効性とその要因を分析した。その業績は以下の通りである。 ①本研究の前段階で、危機や改革の中で、土着系のビジネス・ファミリーが、「財務のための財務」によって、彼らの父祖の興した民間大規模ビジネス・グループにおける所有と経営の支配という経済権力を維持してきたことを指摘してきた。2021年度は、国際政治学会において、そうした金融的手段への金融監督の実効性の課題を示して報告した。 ②二つの国有企業に対する金融監督の実効性を分析し、国際学会The 12th International Convention of Asia Scholars(2021年8月27日)で報告した。a.アジア経済危機以降、保険部門という非銀行金融部門に対する政府の支援のインセンティブは小さかった点、b.国有企業に対する当局の金融監督の権限は制度的に担保されていなかった点、c. 80年代から続く少数株主の利益搾取の慣行、d.そうした慣行を集団的に実施してきた小規模な経済権力ネットワークの重層構造、の4点を指摘した。そのうえで、これまでの国有企業改革の動向のレビューや金融制度改革の実効性の分析などの課題を挙げた。 ③上記②で分析対象とした2つの国有企業のうち、非銀行金融部門の国有生命保険会社をより詳細に政治経済的に分析した論文を『アジア研究』(アジア政経学会)に投稿し、2022年5月現在査読プロセス中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、現地でのフィールドワークが不可能であった。 また、2021年度後半は妻の出産と育児等もあり、進捗に影響が出た。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度実施できなかった4つの分析を進め、随時その成果を論文・著書や学会報告で発表する予定である。 ①証券市場における金融監督の法制度を分析した論文を、昨年度から継続して修正し、国際ジャーナルIndonesian Journal of Political Research(IJPR)に投稿を予定している。 ②国有企業に対する金融監督の実効性に関する論文(現在『アジア研究』で査読プロセス中)の執筆を完成する。 ③年度後半には、昨年度実施できなかった金融庁の新設をめぐる政治経済に関する調査・分析をすすめる。なお、調査にあたっては、アジア経済危機後の金融制度改革の文脈を参照しながら、オンラインでのヒアリングも活用して進めていく。その成果を論文にまとめていく。 ④これまでの調査・分析、すなわちアジア経済危機以降の証券市場および国有企業のガバナンスと不透明性に対する金融制度改革をめぐる政治経済の分析をまと め、『インドネシアにおける金融監督の実効性』をテーマとする著書の執筆を開始する
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額が生じた理由:2020年度に引き続き2021年度も、日本、および研究対象国であるインドネシアの双方で新型コロナウィルスの蔓延していたため、フィールドワークのための渡航が困難であった。そのために海外渡航旅費が使用できなかった。また、妻の出産・育児・手術も研究費使用の執行に影響した。 使用計画:金融監督関連書籍購入(35万)、インドネシア政治経済関連書籍(35万)、新聞記事・データ購入費(20万)および国内旅費(京都大学経済学部・経済学研究科図書館および京都大学東南アジア地域研究研究所図書館(京都)10万×3回、アジア経済研究所図書館(千葉)15万×2回)
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