研究課題/領域番号 |
18K18265
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小西 鉄 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60770279)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インドネシア / 金融監督の実効性 / 経済改革 / 非銀行金融部門 / 国有企業 |
研究実績の概要 |
「インドネシアの経済改革と国有企業:「抑制された国家資本主義」論の批判的検討」と題する学会報告(アジア政経学会2022年度春季大会、web開催)をおこなった。第2次ジョコ政権での国家資本主義の台頭の中で国有企業活用を議論してきた先行研究に対して、いくつかの検証の必要性を指摘した。①アジア経済危機以降の金融監督の改革の実効性、②クラウディング・アウト効果の合理性、③開発の成果、といった点の検証である。そこでは、金融部門の国有企業の汚職による国家損失の大きさを指摘し、それに対する監視の実効性を検討する必要性も指摘した。 共著論文Muhamad Iksan; Tetsu Konishi.2022. "Central Bank Independency and Policy Outcomes: The Cross Countries Comparison." (in Journal of Central Banking Law & Institutions. Vol.1, No.3)を執筆した。中央銀行は金融システム全体の監督を担うため、その独立性は金融監督の実効性に及ぼす影響は大きい。同論文では、インドネシアおよび他の東アジア諸国における中央銀行の独立性を数量的に比較した。権威主義体制から民主化の過程でインドネシアでは中央銀行の独立性は維持された一方で、日本では第二次安倍政権期に政府のコミットメントの下で国債大量購入を実施してきたことを指摘した。 2023年5月現在、単独論文「インドネシアの金融監督における行為規制の実効性:国有生命保険会社の資金による株価操作事件を事例として」(仮題)を執筆し、専門誌への投稿を準備している。同論文では、2019年に発覚した国有保険会社の資金流用事件を分析し、非銀行金融部門での金融監督の実効性を論証する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本およびインドネシアでは、2022年度も新型コロナ・ウィルス感染症の感染に広がりが見られたため、現地フィールドワークのためのインドネシア渡航を自粛した。そのため、情報収集に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
下記3点を中心に、インドネシアにおける金融監督の実効性に関する検証を行う。 ①アジア経済危機以降の金融監督の実効性を、セクター別や所有別に比較検討することで、経済改革の実効性を論証する。第1に、銀行部門に比して改革が遅れてきた非銀行金融部門の金融監督の実効性を検証する。第2に、金融監督の対象が国有企業の場合の実効性と民間企業の場合のそれとで比較を行う。それぞれ法制度面を検討したうえで、事例分析を行う。 ②金融サービス庁(OJK)による金融監督の実効性を、2014年設立前の制度設計、設立後の諸事例でのOJKの活動などから検証する。 ③以上の検証から、インドネシアでの経済改革が四半世紀を経て、企業に対する制裁の実効性の変化があったのか、その要因は何かを考察する。 日本およびインドネシアでのコロナ感染状況が許せば、現地フィールドワークを実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる理由は、当初見込んでいたフィールドワークや海外研究者との議論のための海外渡航が、依然続いてきたコロナ禍により困難になったことにある。 今年度2023年度、インドネシア渡航を1回または2回計画しており、その渡航滞在費用としての使用を見込んでいる。
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