研究課題/領域番号 |
18K18269
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
梶田 諒介 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (40811112)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インドネシア / 歴史地震 / 歴史資料 / 新聞 / 復元 / 歴史災害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、インドネシアにおける歴史地震・火山噴火について、オランダ植民地期の歴史資料を用いながら過去の地震記録および火山噴火記録を復元し、さらにインドネシアの地域社会における歴史的な災害対応と変遷を明らかにすることである。R1年度は、オランダ植民地期のオランダ語新聞3紙を用いて1810-50年の期間の自然災害に関する記録178件を抽出し分析を行った。内訳として地震関連記事が109件、火山噴火関連記事が66件、降灰関連記事が3件であった。地震関連記事109件に関して、先行研究および米大気海洋庁による国際地震データベースの記録と比較を行い、新聞3紙のみに掲載された地震動記録が65件にのぼることが判明した。これらの地震動記録について、地震動がどれくらいの強さであったかを推定するために、掲載記事で使用されたオランダ語表現14種を分析し、震度階との対応関係を求めた。 東京外国語大学にて開催された2019年度海外学術調査フォーラムプログラム・海外学術調査フェスタにおいて、筆者の科研費課題でもある「インドネシアにおける歴史地震・火山噴火の被害記録の復元と災害対応の変遷」として報告した。上記の19世紀前半の植民地期新聞の解析を中心に報告を行い、地質学や考古学などを専門とする方々との意見交換および議論を行い、異なる学問分野からの貴重な意見を得ることができた。長期間の地震動記録を収集することは重要な研究であるが、19世紀に発生した個別の大きな地震動を取り上げることで、地域社会にもたらした被害状況やどの程度の地理的範囲にまで地震動の影響があったのかを復元することも今後の課題としていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況として、昨年度の課題として挙げた19世紀前半の歴史地震を対象に分析を進めた。スマトラ島など各地域における人的・物的被害状況の復元も引き続き行い、主に19世紀から20世紀初頭までの地震・火山活動を対象に本研究をすすめる。R2年2月ごろから新型コロナウイルスの世界的流行および各国の防疫対策措置の厳しい影響により、R1年度末に予定していたオランダでの文献調査を変更せざるを得なかった。インドネシアおよびオランダにおける現地調査・文献調査を実施するためには、各国の対策や情勢を注視しつつ研究の実施可能性を探っていく必要がある。これまでの文献調査によって本研究に必須となる史料はカメラ撮影によるデジタルデータとして入手しており、さらに現地に行かずとも、Delpherといった植民地期新聞データベースを用いて植民地期新聞記事の分析は続けていくことが可能である。各国の入国制限等が解除されれば、本務先のプロジェクト研究用務や大学非常勤講師の用務との調整の上、地震・火山噴火に関する文献の記録収集および分析を集中的に実施することを目指す。全体的に研究の進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ないが、本研究課題の計画は4年間であるため全体的な研究計画も含めて検討を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度は日本を含む諸外国の新型コロナウイルスに関する感染状況や貿易措置に注視しつつ、インドネシアおよびオランダでの現地調査が実施できない可能性も踏まえて研究の方向性を修正しながらすすめる。R2年5月現在、インドネシアは新型コロナウイルスに係る海外からの入国については厳しい制限・規制が敷かれており、ジャカルタ都市部などでは大規模社会制限が引き続き実施されている。一方、オランダでも新型コロナウイルス関連措置が徐々に緩和されているが、今後の第二波への対策として、ヨーロッパ諸国と同様に依然予断を許さない状況である。今年度はこれまでの現地調査で入手した主な文献を用いて、植民地期インドネシアの歴史的な自然災害と地域社会の対応について分析することを中心に行い、各国の入国制限等が解除されれば現地調査も視野に入れて計画を立てていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度末に長期の現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス措置による入国制限によりインドネシア及びオランダでの現地調査は見送らざるを得なかった。そのため、旅費として計上していた分を次年度にまわす。次年度使用額として生じた助成金について、R2年度末までに入国制限等が解除されていれば旅費に使うことを計画している。現段階ではR3年2-3月の期間に1ヶ月程度の旅費として計上する。また研究用ノートパソコン購入のため物品費としても計上する。
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