2010年代以降、シリアなどの中東諸国では、超大国だけでなく、周辺諸国による紛争介入が行われながら、長期的な紛争状態が続き、難民問題を含め超地域的な影響が及んできた。本研究では、紛争介入を行う周辺国を代表するイランについて、一定の民主的政治制度が行われてきた同国の内政上の構造と宗教的言説をイデオロギー化させてきたことを踏まえて、「殉教者(シャヒード)」をめぐる言説構造に着目しながら、社会的に紛争介入を可能/紛争介入への批判を妨げる社会的メカニズムの解明を試みた。その結果、「殉教者」概念の操作を通じて異なる紛争の当事者性が国家の言説に一元化されてきたことを明らかにした。
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