ベトナムでは現在、小規模な森林所有者が所有する森林における森林認証取得件数・面積が増加している。小規模な森林における森林認証の拡大の要因を分析することは、ベトナムだけでなく、小規模な森林所有者の森林認証取得に同様に取り組んでいる国々へのフィードバックを行うことができる。 前年度に実施した、ベトナム北中部地域の住民植林を行っている97世帯に対する定量的な情報収集を行った聞き取り調査に関して、本年度は定性的な情報収集を行った。これによって、住民植林を行う世帯の中で、森林認証を取得している世帯と取得していない世帯の比較にたる情報が集まり、最終的な分析を行うことができた。 森林認証を取得している世帯は、取得していない世帯に比べ、使用権のある植林用地を2倍から4倍保有していること、その使用権購入の原資となる資金は公的な職業からの安定的な収入によるものであることが明らかになった。また、森林認証取得後は、施肥作業などを行い、スケールメリットとともに木材からの収入を拡大させていた。森林認証を取得した理由は、高く販売できるからというものが一番多く、反対に森林認証を取得していない世帯は伐採・木材生産のサイクルが5年から10年に延びることへの不安や森林認証の基準を満たすことができないからという理由を提示した。 本研究によって、地域住民による森林認証取得が拡大している要因が高収入・安定収入世帯による土地権の集積拡大であること、および未取得の住民に関してはボトルネックが、伐期が長くなることと森林認証基準のハードルの高さであることを明らかにすることができ、今後の住民林業における森林認証拡大に貢献する成果を提示することができた。
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