最終年度は昨年に引き続いているコロナパンデミックのため、国内の限定した場所でフィールドワークを行うとともに、文献及び資料を用いた研究を中心に進めた。宗教的聖地における聖性イメージの調査に関しては、前年度から引き続き巨石に現れる聖性に関してフィールドワークを行い、本年度は香川の三豊の賀茂神社および妙見宮を調査し状況を把握した。また牟礼・庵治地域における岩石による聖性イメージの把握のため、高松市石の民族資料館およびイサム・ノグチの庭園美術館にて資料を収集した。その他、主に建築を中心に世界の宗教的聖地に関する資料を収集し分析を行った。 またコロナパンデミック下において当初設定していたオーバーツーリズム状況が見られないため、場所の聖性イメージを乱す参拝行動という枠組みをより広げ、宗教的聖地での振る舞いも含めた観光における倫理的実践に関して、文献や資料などから包括的に把握することに勤めた。その過程で現在の社会状況におけるまなざしの問題と併せて考察を行った。本年度の成果として、河出書房新社より出版した「まなざしの革命」の一部で考察としてまとめ、また観光学術学会「観光と倫理」のシンポジウムにて発表した。また総合地球環境研究所が主催する国際シンポジウム「the Art of Living with Nature」でも発表を行った。 コロナパンデミックのため観光を巡る状況が根本的に変わり、当初の課題が成立しなくなったため、研究の方向性を大幅に変更したが、研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、宗教学者の鎌田東二氏との共著「ヒューマンスケールを超えて」(ぷねうま舎)、「まなざしの革命」(河出書房新社)の著書二冊、映像作品「seeing differently」(欧州の4つの国際映画祭にて受賞)、観光学術学会シンポジウムでの発表、国際シンポジウムでの発表がある。
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