八重山地方の中心であり、移住先として人気の高い沖縄県石垣市の移住・定住促進の取り組みについて調査を行い、自治体と地域住民を結ぶ中間支援組織が果たす役割について価値共創の視点から分析を行った。その結果、以下の点が明らかになった。 第1に、例えば移住後の住居を探すために不動産会社を紹介するような場合、自治体が直接的にサービスを提供する場合は、公平性の観点から特定の企業を紹介できないというような制限があるが、民間が設立した中間支援組織では同様の制限がないため、移住者にとって高い価値につながる価値提案が可能になっていた。第2に、中間支援組織の運営者が移住者であることで、移住希望者や移住者のニーズについて深く理解しており、移住希望者や移住者に寄り添ったサービスを提供することで高い文脈価値を生み出していた。第3に、助成メニューの情報も含めて移住・定住を支援するサービスをワン・ストップで提供し、移住前後を通じてイベントの開催などで移住者とかかわることで、地域とのコミュニケーションと相互作用を生み出し、移住希望者に移住を促す価値や移住後に定住を促す価値を生み出す「場」を提供していた。 移住・定住に繋がる価値共創を行うためには、移住希望者や移住者との接点を持ち、その接点においてインタラクティブなコミュニケーションを交わすことが必要であり、共創的なコミュニケーションが行われる場を生成することが出発点となる。また共創に繋がる価値提案を行うことが求められる。石垣市の事例からは、中間支援組織が価値共創を促し、移住・定住促進に大きな役割を果たしていることが明らかになった。
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