本研究は、地域の主体的な観光地づくりを支援するため、地域の観光施策の立案と評価に貢献する観光統計データ活用のあり方を提案することを目的としている。 平成31年度は、観光施策の立案に有効なデータ分析・活用方法を検討した。そこで、富士河口湖町をケーススタディとして、観光客ニーズを反映していると考えられる観光実態調査の自由記述テキストデータをもとに分析した。テキストマイニングによる分析の結果、飲食施設の不足等、行政が課題として認識する必要な観光施策を客観的に補強することができた。また、公共交通の料金に係る課題等、行政が把握していない観光客ならではの視点・ニーズを発見することに貢献しうることが確認できた。 他方、本研究の主題に関して先進的な取り組みを行っているイタリアとフランスの地域観光組織へのヒアリングを通して、観光客ニーズの把握方法および施策への反映方法について示唆を得た。例えばフランスの美しい村連合に加盟しているゴルド村では、観光客に対する高い品質の確保が重要であり、観光客が満足できる観光サービスを量・質ともに提供していることがわかった。それに対して、日本の美しい村は観光サービスの量が圧倒的に不足しているとの指摘も受けた。本研究では、客観データを用いた観光サービス提供レベルの日欧比較を行い、ヒアリングで受けた指摘の検証を行った。その結果、宿泊施設数等の定量データでは日本は欧州の地域と比べてそん色ないことが明らかになった。他方、フランスは歴史的建造物や博物館など観光客にとって観るべき対象が明確化されているが、日本は山や景観などのように観光客にとっての楽しみ方が明確でないという違いが確認された。
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