本研究は、ポリネシア・ツバルを事例に、気候変動ツーリズムにおける観光経験を具体的に明らかにした。観光者は現地で見たものを積極的に気候変動という文脈に位置付けることで、景観を「消えゆく」ものとして意味づけており、その際にメディアや現地ガイドが大きな影響を与えていたことがわかった。また、観光者の多くが何らかの倫理的な責任を感じており、彼らの倫理は加害者の日本人である自分たちと、被害者のツバル人である彼らという構図に基づくものであった。ただし、そうした構図にとらわれない人と人との出会いとつながりの場として観光をとらえる者もおり、具体的なつながりの中で倫理的な態度が育まれる可能性を見出すことができる。
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