2020年度は、研究の最終年度であり、これまでの調査研究でやりのこした点を補いつつ、成果のアウトプットを進めた。 まず、積み残されている課題であった(1)住民側のコンテンツやファンの受容の現状と過程(2)コンテンツ受容後の地域住民間のネットワーク形成の追加調査を進めた。具体的には、アニメ聖地とみなされた地域の住民への聞き取り調査を通じて、上記課題の実態の把握に努めた。新型コロナウイルス感染拡大およびそれに伴う緊急事態宣言の2度の発出もあり、当初構想していた通りの調査に困難が伴ったが、被調査者の協力もあり、兵庫県西宮市と静岡県沼津市で聞き取り調査を実施できた。その結果、アニメ聖地化とそれに伴うファンの訪問をきっかけに地域資源への再発見が地域住民間で共有されていき、そのことが地域住民主体の新しい地域資源活用の取り組みにつながる過程を描き出すことができた。また、その際、「聖地化」前より存在していた地域の住民組織がファン受容でもネットワーク形成でも大きな役割を果たしたことが確認できた。たとえば、沼津市のあげつち商店街の場合、「あげつちおかみさん会」がファンの趣味を住民間で共有するうえで大きかった。一方で、アニメ聖地の現状を考えるうえで、マンガ表現研究で用いられている「キャラ」概念を応用することで、その現状を説明できることも見出された。 これらの成果については、地域活性学会や情報通信学会での口頭報告、さらには『地域活性研究』で論考を発表した。今後の研究においては「アニメ聖地」において進行する「キャラ縁の聖地」化と、地域をそうまなざす当事者のリアリティに迫る研究を進めていきたい。
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