研究課題/領域番号 |
18K18290
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長田 華子 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20632285)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 西ベンガル州 / 縫製産業 / 家内労働 / ケア労働 / フェミニスト経済学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はバングラデシュとインドの縫製労働者を事例として「労働力の女性化」について再考することである。当該年度の研究実績は、以下の3点である。 第1に、当初の研究実施計画通り、2019年8月に3週間かけて西ベンガル州コルカタで縫製工場調査を実施した点である。インド国内の大手下着メーカーの一大縫製拠点を調査し、その実態を解明した。西ベンガル州では、バングラデシュと異なり小規模な縫製工場が多く、そこで働く縫製工員は男性が多いのが特徴である。しかし、縫製工場で担えない「些末な」業務(例えば糸切り作業など)を多くの女性たちが家庭内で担っていることを明らかにした。またその実態を女性たちへの聞き取り調査から解明した。あわせて、フェミニスト経済学の研究成果を軸に、家庭内でのケア・家事労働と家内の仕事との関連について調査した。 第2に、西ベンガル州の調査で明らかにした点を整理し、その調査結果を研究会や講演会で発表する、また論文を執筆することを通じて積極的に公表したことである。研究会での報告を通じて、専門分野を同じくする研究者から今後につながる課題や考察のポイントを指摘された。今後はこうした指摘を踏まえて、研究成果の精度をあげて海外の学術雑誌への論文投稿を目指すなど努力したい。 第3に、バングラデシュの事例について、海外の学術雑誌(Journal of Interdisciplinary Economics)への論文を投稿し掲載されたことである。研究代表者がこれまでバングラデシュで実施した調査結果をまとめたものであるが、海外の学術雑誌に掲載されたことは当該年度の研究実績の一つといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実績の概要で明記した通り、おおむね順調に進展していると考える。理由は以下のとおりである。 第1に、インド西ベンガル州の調査を順調に遂行できているからである。調査協力者の協力により、大手下着メーカの一大生産拠点を見つけ、そこでの調査を遂行できている点が大きい。家内労働者の実態についてはおおむね調査を完了したと考えているが、大手下着メーカーのサプライチェーン全体を把握したうえで、その中に家内労働者の実態を位置付ける必要性を感じている。今後はそうした点に考慮しながら調査を継続する計画である。 第2に、調査結果を分析するとともに、その結果の公表にも精力的に取り組んだからである。当該年度は、持続可能な開発目標との関連で、講演会の講師として招かれる機会も多く、社会への知の還元にも一定程度貢献できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、主に以下の三点である。 第1に、インド西ベンガル州の調査を継続することである。引き続き、大手下着メーカーの生産拠点での調査を継続するとともに、下着メーカーのサプライチェーンの解明を行う計画である。 第2に、研究実施計画に記した、インドタミル・ナドゥ州ティルプールでの現地調査を実施することである。西ベンガル州との比較可能な点を探りながら調査地や調査工場の検討を進めたい。 第3に、「労働力の女性化」を再考するうえで、フェミニスト経済学の理論や実証研究の整理と検討を試みることである。これまでに諸外国で明らかにされた実証研究などを参考にし、調査結果とどの点が同じでどの点が異なるのかなど、検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が4,686円生じた理由は、パソコンの購入費用が当初計上していた額よりも安かったことに起因すると考えられる。4,686円が次年度分に繰り越しされるが、額も小さく次年度に請求した助成金と合算して物品費等にあてる計画である。
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