研究課題/領域番号 |
18K18290
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長田 華子 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20632285)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 縫製産業 / インド西ベンガル州 / バングラデシュ / 労働力の女性化 / グローバル・サプライチェーン / グローバル・バリューチェーン / 家内労働者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、バングラデシュとインドの縫製労働者を事例として「労働力の女性化」について再考することである。当該年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、予定していたインド調査を実施出来なかった。新たな調査を遂行出来なかった中で、当該年度は、以下の2点を重点的に取り組んだ。 第1に、これまでにインド西ベンガル州コルカタで実施した調査の結果を論文としてまとめたことである。主に、インド国内市場向けに販売されている低価格の下着生産の生産過程とそこに従事する家内労働者の実態に関するものである。執筆に際して、近年注目を集めているグローバル・サプライチェーン(あるいはグローバル・バリューチェーン)のジェンダー分析や家内労働者に関するフェミニスト経済学の研究蓄積を講読し、理論の精緻化を試みた。 第2に、論文執筆に加えて、学会主催の研究会や自治体等での講演会の場で、インド西ベンガル州での調査結果や2013年4月のラナ・プラザの工場倒壊事故後のバングラデシュの縫製産業の実状に関する報告や講演に力を注いだことである。また、新型コロナウイルス感染症の流行とその危機に伴い、世界的なアパレル不況の中、主要なアパレル生産国であるバングラデシュやインドではその経済的な煽りを受けている。特に、発注(先進国)企業による注文の解約や原材料や完成商品の支払い停止に伴い多くの縫製労働者が解雇や一時解雇される事態に陥っている。こうした現地の最新の状況を現地の研究者による研究成果やILO(国際労働機関)をはじめとする国連機関の報告書を講読することで把握し、講演会の場で情報を提供することにも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記したように、当該年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、予定していたインド西ベンガル州での調査を実施することは出来なかった。しかし、グローバル・サプライチェーン(あるいはグローバル・バリューチェーン)のジェンダー分析や家内労働者研究に関するフェミニスト経済学の研究蓄積を講読し、理論の精緻化を図ることには、十分な時間を割けたと考える。当初の計画では、調査に重点を置いていたが、調査を遂行できなかった半面、これまで時間の制約上十分に取り組むことのできなかった文献講読に時間を割くことができたことは、当該年度の収穫であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、新型コロナウイルス感染症の影響を免れないだろうと予測している。特に、調査地域の1つであるインドの感染状況と医療体制の逼迫は深刻であり、次年度も調査を遂行することは困難であると予想している。すでに実施した調査の内容をもとに、引き続き論文を執筆するとともに、これまでの調査結果をもとに、研究計画の通り「労働力の女性化」概念の再考を試みる予定である。インド西ベンガル州調査、バングラデシュ調査ともに、現在までの内容にもとづいて検討することは十分に可能であると判断する。そのためにも、両国の縫製産業や縫製労働者研究に関する先行研究の整理と検討、また他国での同様の研究成果にも目配りし、インドとバングラデシュの「労働力の女性化」の特徴を析出できるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、予定していた海外調査を実施することができなかった。また国内出張も一度も出来ず、計上していた旅費の全額を使用していない。次年度も同様の傾向が続く可能性があるが、文献研究に力点を置くなどして計画的な予算執行に努めたい。
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