研究課題/領域番号 |
18K18293
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤田 智子 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (20782783)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 代理懐胎 / 生殖補助医療 / オーストラリア家族 / 自己決定 / 生権力 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
2年目の本年度は、(1)代理懐胎を支援する団体主催のカンファレンスへの参加と調査に向けたネットワークづくり、(2)それに基づいた現地調査、(3)オーストラリア国内における「利他的」代理懐胎の現状と問題点の検討、(4)代理懐胎を含む生殖補助医療と女性の自己決定をめぐる理論的考察、そして(5)(4)をもとにした研究成果の発表を行った。 具体的には、まず2019年6月に開催された代理懐胎を支援するNPOのカンファレンスに参加し、そこでインタビュー調査に向けたネットワークづくりを行った。その後、2020年2月から3月にかけて、オーストラリア・シドニー、キャンベラ、メルボルンにて約3週間の現地調査を行い、代理懐胎の専門家であるカウンセラーや弁護士、さらには代理懐胎の当事者である代理母や依頼者カップルへのインタビュー調査を行った。また、州立図書館やメルボルン大学などで資料調査も行った。現在は、そこで得られた資料およびインタビュー・データをもとに、特にオーストラリア国内における「利他的」代理懐胎の現状、その問題点などについて、ジェンダーや生権力の点から分析している。 さらに、これまでの研究の成果をもとに、生殖補助医療、特に代理出産が社会、生、身体、女性、家族に何をもたらすのかについて、女性の自己決定の観点から理論的に考察し、その結果を2019年10月の日本社会学会で報告した。研究報告の内容は、その後のインタビュー調査の成果などをさらに加えたうえで、学会誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、代理懐胎の専門家などへの聞き取りを行い、オーストラリア国内における「利他的」代理懐胎の現状と問題点を考察する予定であった。2019年6月にインタビュー調査に向けたネットワークづくりのために、代理懐胎を支援する団体のカンファレンスに参加し、その後2020年2月~3月にかけて現地調査を行った。そこでは、代理懐胎に関わる弁護士やカウンセラー、当事者にインタビューを行うことはできたが、調査対象者の獲得に苦労し、分析に十分な数のインタビューを行うことはできていない。そのため、現在までの進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。次年度は、今年度インタビューを行った調査対象者に紹介してもらった方々へのインタビューから雪だるま式に調査を行っていく予定である。 一方、本年度は、代理懐胎とその規制が家族、個人の生、身体、社会へもたらす影響の理論的分析をさらに進めることができた。またその成果を日本社会学会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず、(a)今年度行ったインタビュー調査を継続する。コロナウィルスをめぐる状況にもよるが、2020年の夏、あるいは2021年の春にオーストラリアに行き、代理懐胎の専門家であるカウンセラーや弁護士、さらには医師などにインタビューを行うとともに、代理懐胎の当事者である代理母や依頼者カップルなどへのインタビューも継続し、特にオーストラリア国内における「利他的」代理懐胎の現状やその問題点などについて現在進めている分析を完了させたい。なお、コロナウィルスの影響でオーストラリアへ行くことができない場合は、Skypeなどのオンラインのシステムを使用してインタビューを行うことを検討している。その成果は学会などで報告し、学会誌への投稿を目指す。 さらに、(b)それまでの成果を踏まえ、代理懐胎とその規制が家族、個人の生、身体、社会へもたらす影響を理論的に分析する。この作業も既に進めているが、今年度の調査、さらには来年度行う調査や分析の成果を加味した形で、生殖医療を通した身体の統治の理論化を目指す。その成果についても学会などで報告し、学会誌への投稿を目指す。
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