本研究はオーストラリアを事例に、グローバル化や生殖補助医療の発展の中で、いかに家族のあり方が問い直され、家族自体へのこだわりが再生産されているのかを分析し、それにより生殖補助医療を通した身体や家族の統治について理論的に考察することを目的としていた。2000年代終わり以降のオーストラリアにおける生殖ツーリズムや代理懐胎を含む生殖補助医療とその規制をめぐる議論を検討し、生殖補助医療を通していかに社会規範が再生産されているのかを明らかにするとともに、女性の身体に入り込む生殖技術と自己決定のあり方について理論的に考察し、現代社会における複雑な家族統治のテクノロジーやネットワークのあり様を描き出した。
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